サイエンスとプラグマティズムの間で

実験家・プラグマティスト。思考実験や社会実験を繰り返しながら、実用に向けた試行錯誤を実…

サイエンスとプラグマティズムの間で

実験家・プラグマティスト。思考実験や社会実験を繰り返しながら、実用に向けた試行錯誤を実際の体験として積み重ねることが好きです。呟きは主にThreadsで @taishibrian お問合せ⇒https://note.com/taishibrian/message

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斐伊川に流るるクシナダ姫の涙

プロローグ まるで、大蛇が獲物を呑みこむような光景だった。 堤からあふれ出した泥水は集落に達して、家々を押し流していく。人々の暮らしが自然の大きな力によって無慈悲に破壊されていく様子を、クシナダ姫は無力感に苛まれながら眺めていた。 あらすじ 第一話:糸魚川の翡翠と鉄の女王 第二話:信濃川を望む墳丘の墓標 第三話:神通川の流れを包む 第四話:手取川を取り巻く河畔の森 第五話:九頭竜川の暴れオロチ 第六話:千代川の砂を生むもの 第七話:日野川と国引き 第八話:

    • 第八話:斐伊川に流るるクシナダ姫の涙

      タイトル・あらすじはコチラ↓ 『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』 「二本の木の棒が流れてくるわ。」 肥川のほとりで、雲国の皇女クシナダ姫は二本の木の棒が流れてくることに気が付いた。雲国に住む農民たちは箸を使う習慣はなく、クシナダ姫も海の向こうに住む異民族がこの箸というものを食事の際に使うのだと聞いたことがある。 「わしの妻になれ。」 そこに一人の男がやってきた。名をスサノオという。スサノオはクシナダ姫に対して結婚を迫ってくる。スサノオは一見して粗暴そうな男であるが、なぜか自

      • 第七話:日野川と国引き

        タイトル・あらすじはコチラ↓ 『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』 「八叉のオロチは火ノ川に住んでいる。」 コノハナサクヤ姫は子どもの頃から、言い伝えを聞いていた。火ノ川では度々洪水が発生しており、その度にオロチが来たと農民たちは怖れている。火ノ川では下流域に砂が蓄積し、砂洲や砂の自然堤が多く形成されている。そしてそれらは火ノ川の気まぐれで流路を変え、度々農民たちの暮らしを脅かしていたのだ。まさにオロチのように、その首がいくつも分かれてクネクネと土地を呑みこんでいく。 コノハ

        • 第六話:千代川の砂を生むもの

          タイトル・あらすじはコチラ↓ 『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』 「まるで馬の背のようね。」 千谷川の河口には、まるで砂漠のような洲が形成されている。そこには北風によって築かれた砂の山があり、地元の民は「馬の背」と呼んでいた。海に向かって断続的に砂丘が続いており、高くなった砂丘の頂上からは大山や隠岐まで見えた。低地には入海が広がって湿地帯となっており、渡り鳥や様々な生き物たちが羽を休めている。人々はそこで鳥を捕獲し、いつしかその地は鳥取と呼ばれるようになった。 千谷川はそ

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          SANCHACOで毎週木曜日夕方から、家などで積読になってしまっている書籍を持ち寄って黙々とひたすら読書する読書会を開催します。とくに本を紹介し合う等の企画は致しませんので、お気軽にご参加ください。 <実施概要> 毎週木曜日 17時頃~21時頃まで(ご自由に入退室ください) 店主セレクトの美味しいお茶付き 費用:2,222円/月(4回分換算)  ↓『猫と積読』メンバーシップよりご加入ください   (初月無料なので、まずはお試しからどうぞ!)

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          第五話:九頭竜川の暴れオロチ

          タイトル・あらすじはコチラ↓ 『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』 「またオロチ様が出たのですか。」 ミヅハノメは農民たちとともに河岸を見て回っている。川は上流から大量の土砂を運び、それによって自身の流れを変えていく。大蛇のごとき暴れ方をするこの川では河岸の堤はすぐに崩れてしまうため、人々はこの川を「崩れ川」と呼んでいた。 ミヅハノメは過去四人の女性が志半ばで亡くなった記憶を持っている。自分自身もそうなるのではないかと考えており、とくにこのオロチという存在が猛威をふるっている

          第五話:九頭竜川の暴れオロチ

          第四話:手取川を取り巻く河畔の森

          タイトル・あらすじはコチラ↓ 『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』 「このご縁が末永く幸せに続きますように」 ククリ姫は若い二人の新婚夫婦に声をかける。新婦とは幼い頃から恋話を続けてきた仲であり、相談に乗っては話しかけるきっかけ作りに協力していた。いつしかククリ姫の周囲には、恋に恋する乙女たちが集まるようになっていた。 ククリ姫には秘密がある。自身のなかにヌナカワ姫とアキ姫、セオリツ姫の記憶が残っており、それぞれ志半ばで若くして亡くなっていた。ククリ姫として生きる際に決意した

          第四話:手取川を取り巻く河畔の森

          第三話:神通川の流れを包む

          タイトル・あらすじはコチラ↓ 『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』 「次は鵜坂神社でお神楽を舞う準備をしなければなりません。」 セオリツ姫は、巫女として多久比禮志神社と鵜坂神社を忙しそうに行き来している。売比川を挟んで東西に位置する神社において、それぞれ神職を担っている。これまでも数多くの故人たちの口寄せをしてきたが、中でも鮮明に印象に残っているのは越国のヌナカワ姫と科野国のアキ姫だ。大陸から戦略物質としての鉄を手に入れ、それを農具として生かして土地改良を行なうという記憶は、セ

          第二話:信濃川を望む墳丘の墓標

          タイトル・あらすじはコチラ↓ 『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』 「またあの夢か。」 アキ姫は目を覚ますと、少し前まで見ていた夢を思い出していた。自分自身はヌナカワ姫として、糸魚川流域から越国を統治しているようだった。そのヌナカワ姫が遠征から帰還する際に大水に呑まれ、そこでいつも目が覚めるのだ。 アキ姫の住む川中島は科野国の北部に位置しており、科野川と犀川に挟まれている。辺りは湿地帯で水が停滞しており、臭く汚れた水が溜まっている。蛇行する川は毎年のようにその流路を変え、その

          第二話:信濃川を望む墳丘の墓標

          第一話:糸魚川の翡翠と鉄の女王

          タイトル・あらすじはコチラ↓ 『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』 「もう雪倉岳の雪形が見えると申すか。」 従者からの言葉にヌナカワ姫は玉座から思わず立ち上がってしまう。その胸には巨大な翡翠の首飾りをかけている。再び玉座に腰を下ろすと、翡翠の首飾りは大きく弾んだ。 年々、雪形=山頂付近に雪解け時に現れる紋様 の出現が早まっているように感じる。ヌナカワ姫が子どもの頃は、年が明けてから満月が五度来てようやく雪形が見られたものだった。ヌナカワ姫の治める越国では、この山々の雪形が見え

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          人がいないなら、動物を活かせば良いんじゃない?『限界集落の経営学』

          地方創生⇒デジタル田園都市構想と、看板が完全にかけ代わってしまった感のある昨今、地方ではバス路線が減少し宿泊施設が軒並みコロナ後の需要増に耐え切れず、飲食店は原材料高騰によって閉店が相次いでいます。もはや人材という最大の希少資源が失われている状況では、地方の存続すら危ぶまれていると言えます。 私自身もかつて限界集落と呼ばれる地域で活動したことがありますが、十数年経ってかなり様相が変わってきていると感じます。つまり、生き残る地域と衰退して消滅に向かう地域の二極化が進み、残酷な

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          阪神タイガースは交流戦をこの先生きのこることができるのか

          いよいよプロ野球はセパ交流戦に突入します。例年、悲喜こもごもな展開が起こる中で、我らが阪神タイガースはいかに戦うのでしょうか。セ・リーグではかろうじて首位を守ったものの、打線は低調でリリーフ陣を中心に疲れが見え始めている、何ともテンションが上がりづらい状況です。 一方で昨年の日本一チームということもあり、パ・リーグ各球団も警戒してエース級をぶつけてくるのではないかとも予想できます。いったいどのようなマッチアップになるのかを予測しつつ、阪神タイガースがどれくらいの勝ち星を獲れ

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          最強のクマ対策=秋田犬の歴史

          秋田県鹿角市で山菜採りに山に入った男性がクマに襲われて死亡し、その遺体を回収しようとした警察官が二次被害に遭いました。事態を重くみた県と市町村は緊急会議を開き、対策を協議しています。秋田県では連日各地でクマの出没情報が発生しており、例年に比べてもその頻度は高まっています。 マタギとともに暮らしてきた秋田犬秋田県といえば、秋田犬が有名です。国の天然記念物に指定され、世界でも注目されるその愛くるしい姿は、実はマタギとともに猟犬として厳しく育てられてきた歴史が創り出しています。厳

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          [書評]女の国会

          多作の新川帆立さんの中でも、代表作になるのではないかという一冊。ミステリーでありつつも、ジェンダーや政治参画、格差社会といった様々なテーマが内包されています。 物語は主に4人の女性の視点から進められていく。野党国会議員の高月、その新米秘書の沢村、新聞記者の和田山、地方議員の間橋という、立場も住む場所も違う女性たちが緩やかに連帯していきます。そのきっかけとなるのは、「お嬢」と呼ばれる与党マドンナ議員の不可解な死から始まります。 国会議員、政策秘書、新聞記者、地方議員、、と、

          神保町のシェア型書店[ほんまる]棚主になり見えてきた書店の未来

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          ダムの湖底に消えた奧三面集落

          ドキュメンタリー映画『越後奧三面 山に生かされた日々』を観ました。舞台となった奧三面集落は新潟県北部、村上市から三面川を遡った朝日連峰の山中にありました。2001年に奥三面ダムが完成し、集落はダムの湖底に沈みました。 縄文の暮らしを色濃く残すマタギの里奥三面集落は小池、高橋、伊藤という3つの名字で構成される42戸150人の小さな村でした。ルーツは縄文時代とされ、実際に奥三面集落周辺には縄文から古墳時代にかけての数多くの遺跡が残されています。冬には2-5mもの積雪がある豪雪地

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