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猫の本棚

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記事一覧

[書評]女の国会

多作の新川帆立さんの中でも、代表作になるのではないかという一冊。ミステリーでありつつも、ジェンダーや政治参画、格差社会といった様々なテーマが内包されています。 物語は主に4人の女性の視点から進められていく。野党国会議員の高月、その新米秘書の沢村、新聞記者の和田山、地方議員の間橋という、立場も住む場所も違う女性たちが緩やかに連帯していきます。そのきっかけとなるのは、「お嬢」と呼ばれる与党マドンナ議員の不可解な死から始まります。 国会議員、政策秘書、新聞記者、地方議員、、と、

絶望の王・ゴジラの復活(ゴジラ-1.0レビュー)

『シン・ゴジラ』からは7年ぶりとなる、国内版ゴジラ新作『ゴジラ−1.0』が公開されました。大人の事情でこれだけの期間が空いてしまったようですが、前作を超えることは無理難題であるのも事実でしょう。そんな高いハードルをいとも簡単に超えてきた印象です。 火力では敵わない相手に立ち向かう勇気舞台となったのは終戦まもない1940年代後半、焼け野原となった日本では軍備が解体され、対ゴジラの主戦力となる自衛隊も組織されていません。まさしくゼロの状態のところにゴジラが上陸し、復興が始まって

あの日、諦めずにアフリカを出た先祖がいた。

私たち人類は、ホモ・サピエンスという種族です。近縁にはネアンデルタール人やデニソワ人など、すでに絶滅したけど人類の遺伝子に数%ほど交雑している亜種も存在します。そして我らが祖先であるホモ・サピエンスは、アフリカが起源であることが分かっています。 一度目の“出アフリカ”は失敗していたアフリカ大陸で誕生した人類は、ユーラシア大陸への進出を試みます。現在でも同様ですがアフリカ大陸からユーラシア大陸に出るためには、エジプト北部のスエズを通るか、紅海の入口にあるバブ・エル・マンデブ海

“あなた”は人間と微生物でできている

盲腸という内臓器官をご存じでしょうか。虫垂炎になると、以前は盲腸切除してしまう治療が多かったのですが、実はとても重要な役割を持っていたとして現在では盲腸切除は推奨されていません。その盲腸の役割とは、腸内細菌叢つまり善玉菌の棲み処として消化や人体の様々な機能を援ける働きを持っています。 腸内細菌は、最近ではヤクルト1000などで注目されていますが、睡眠やストレスといった自律神経系の制御や、新型コロナウィルス等の疾病を防ぐ免疫力を高める作用があります。とくに大腸には樹状細胞と呼

日本ローカルの勝ち筋としてのSDGs⇒ESGへ

SDGsは、何だか地球や環境に良いことをしようといった漠然とした善意による取組みといった認識が日本においては支配的です。しかし、世界においてはむしろそんな甘ちょろいことを言っている場合ではなく、グローバルの新たなルールとして、まるでいきなり五輪での競技が不利になってしまう事態が進行しています。 日本では主にSDGsという言葉が使われがちですが、世界は金融・投資の世界を中心にESGを盛り込むことにまさに必死になっています。Environment, Society, Gover

日本史の空白地帯・卑弥呼と邪馬台国

弥生時代は紀元前10世紀〜紀元3世紀の約1,300年ほどと言われており、稲作を中心とした農耕生活と、それに伴う身分階級制度が確立した年代と言われています。そこに登場したのが卑弥呼であり、魏志倭人伝という中国の歴史書に邪馬台国(邪馬臺国)の記載が見られました。 歴史的に有名も、何も分かっていない邪馬台国と卑弥呼は、日本史の教科書に必ず登場し、有名ですがその実態はほとんど分かっていません。それもそのはず、魏志倭人伝に残された数千字の記載のみがその存在を伝えているわけで、日本史に

『冒険の書』が見つからない大人たちへ

孫泰蔵さんの新著『冒険の書 AI時代のアンラーニング』を読みました。ChatGPTが普及し始める等、AIの浸透が始まっている現在、知識の詰込みやテクニックに偏重した受験などの教育・キャリア形成が根底から覆されるものと予測されています。そんなシンギュラリティの世界で人間は何を目指していけば良いのか、これまでの哲学者や科学者たちが構築してきた教育システムの歴史を紐解きながら一緒に考えていく内容です。 現代社会に埋めこまれる、メリトクラシーの罠現在の日本は良い学校に進学し、良い会

そうか、バトンを渡されたのだ。/人口戦略法案

年初の一冊はこれ、『人口戦略法案』。著者は山崎史郎氏、厚労省で介護保険制度の立上げを担い、地方創生初代総括官(地方創生政策の事務方トップ)として就任された際には個人的にもお世話になりました。 北海道の小さな炭鉱の町での経験この本に登場する北海道町村会の北町長のモデルは、私が赴任した奈井江町の北良治前町長です。残念ながら昨年10月に亡くなっています。介護保険の地域側の受け皿として、全国に先駆けて近隣市町と広域連合を組んで事務事業を一元効率化するといった先進性を傍らで学ばせてい

なぜ女性不在の政治が続くのか?『女性のいない民主主義』

自民党総裁選とその後に続く衆院選で政治は一色となっています。選挙とは競争であり、権力を得るためには闘争して勝たなければなりません。このフォーマット自体が実は男性的であり、女性が参画するにはハードルが高いです。 女性に露骨にマウンティングする高齢政治家「マンスプレイニング」という言葉があります。女性は無知で無能な存在なので説教しなければならないと勘違いしているおっさんのことです。同様に「マンタラプション」という女性の発言をさえぎりまくるおっさんもいます。いずれにしても、高齢政

あなたの人生を奪う時間泥棒は誰か?ニュースを減らす選択

今日の新聞一面見出しは、自民党総裁選に向けた政局と皇室スキャンダルの顛末という、恐らくは私の人生に1mmも影響を与えない内容でした。にもかかわらず、私たちはこういったニュースを一大事と捉え熱狂し、SNSなどではいろいろ議論していたりします。 ネットがニュース流通を加速させた現代人が一日に触れる情報量は、中世の人が一生かかって知る情報量よりも多い、とはよく言われることです。インターネットはこの情報流通と速度を加速させ、地球の裏側の出来事も瞬時に知ることができる時代になって久し

経営戦略に社会貢献を取り入れることが利益に繋がる、最新の情勢

『トレイルブレイザー』(開拓者)は、世界最大のCRMメガベンチャーであるSalesForce創始者マーク・ベニオフの自伝的企業経営ノウハウを記した本。とくに社会貢献~CSV~SDGsといった近年の経営戦略の系譜について、自身の経験を踏まえてまとめられています。 SalesForceでは「1-1-1モデル」と呼ばれる、株式の1%と製品の1%、従業員の就業時間の1%を社会貢献に費やす方針を掲げています。それは企業戦略として、株式価値の向上やカスタマーサクセス、従業員の定着といっ

ビジネスが最優先でなくなった時代に

山口周さんの『ビジネスの未来~エコノミーにヒューマニティを取り戻す』を読みました。なんとなく感じていたことが見事に言語化されているとともに、ポスト資本主義やサスティナビリティといった日頃使いがちかつ大きめなワードに対する具体的な処方が腹オチした感じです。 日本という国の売りモノを考える資本主義とはある意味、時間のやり取りであって労働者は資本に対して時間を売り、また資本も事業や不動産など形にしたいものを早く実現するために金利を支払って調達するものです。その前提にあるのは、時間

店の語源は「見せ」、製造工程を見せることが信用に繋がった

宮本常一著『イザベラ・バードの旅『日本奥地紀行』を読む』のご紹介です。『日本奥地紀行』は面白いですが読むには難解な部分もあるため、民俗学者・宮本常一さんの視点で解説してもらえると解像度が格段に上がって、明治時代になったばかりの日本の姿が浮かび上がってきます。 男性が子育てにコミットする地域社会私は、これほど自分の子どもをかわいがる人々を見たことがない。子どもを抱いたり、背負ったり、歩くときは手をとり、子どもの遊戯をじっと見ていたり、参加したり、いつも新しい玩具をくれてやり、

『ザリガニの鳴くところ』からアメリカ大統領選挙を読み解く

現在、アメリカ大統領選挙の真っただ中であり、トランプ大統領の再選か、あるいはバイデン候補が政権を奪取するのかに注目が集まっています。鍵を握るのは「ホワイト・トラッシュ」と呼ばれる白人労働者階級であり、そのほとんどはトランプ大統領を支持していると言われています。 反ソ⇒反日⇒反中の系譜白人労働者階級は古くはヒルビリーと呼ばれ、工業地帯であった中部を中心に保守層を形成してきました。『ヒルビリーエレジー』という本にその暮らしぶりは詳しく載っています。ベトナム戦争後のカウンターカル