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猫の本棚

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記事一覧

日本史の空白地帯・卑弥呼と邪馬台国

弥生時代は紀元前10世紀〜紀元3世紀の約1,300年ほどと言われており、稲作を中心とした農耕生活と、それに伴う身分階級制度が確立した年代と言われています。そこに登場したのが卑弥呼であり、魏志倭人伝という中国の歴史書に邪馬台国(邪馬臺国)の記載が見られました。 歴史的に有名も、何も分かっていない邪馬台国と卑弥呼は、日本史の教科書に必ず登場し、有名ですがその実態はほとんど分かっていません。それもそのはず、魏志倭人伝に残された数千字の記載のみがその存在を伝えているわけで、日本史に

『冒険の書』が見つからない大人たちへ

孫泰蔵さんの新著『冒険の書 AI時代のアンラーニング』を読みました。ChatGPTが普及し始める等、AIの浸透が始まっている現在、知識の詰込みやテクニックに偏重した受験などの教育・キャリア形成が根底から覆されるものと予測されています。そんなシンギュラリティの世界で人間は何を目指していけば良いのか、これまでの哲学者や科学者たちが構築してきた教育システムの歴史を紐解きながら一緒に考えていく内容です。 現代社会に埋めこまれる、メリトクラシーの罠現在の日本は良い学校に進学し、良い会

そうか、バトンを渡されたのだ。/人口戦略法案

年初の一冊はこれ、『人口戦略法案』。著者は山崎史郎氏、厚労省で介護保険制度の立上げを担い、地方創生初代総括官(地方創生政策の事務方トップ)として就任された際には個人的にもお世話になりました。 北海道の小さな炭鉱の町での経験 この本に登場する北海道町村会の北町長のモデルは、私が赴任した奈井江町の北良治前町長です。残念ながら昨年10月に亡くなっています。介護保険の地域側の受け皿として、全国に先駆けて近隣市町と広域連合を組んで事務事業を一元効率化するといった先進性を傍らで学ばせ

なぜ女性不在の政治が続くのか?『女性のいない民主主義』

自民党総裁選とその後に続く衆院選で政治は一色となっています。選挙とは競争であり、権力を得るためには闘争して勝たなければなりません。このフォーマット自体が実は男性的であり、女性が参画するにはハードルが高いです。 女性に露骨にマウンティングする高齢政治家「マンスプレイニング」という言葉があります。女性は無知で無能な存在なので説教しなければならないと勘違いしているおっさんのことです。同様に「マンタラプション」という女性の発言をさえぎりまくるおっさんもいます。いずれにしても、高齢政

あなたの人生を奪う時間泥棒は誰か?ニュースを減らす選択

今日の新聞一面見出しは、自民党総裁選に向けた政局と皇室スキャンダルの顛末という、恐らくは私の人生に1mmも影響を与えない内容でした。にもかかわらず、私たちはこういったニュースを一大事と捉え熱狂し、SNSなどではいろいろ議論していたりします。 ネットがニュース流通を加速させた現代人が一日に触れる情報量は、中世の人が一生かかって知る情報量よりも多い、とはよく言われることです。インターネットはこの情報流通と速度を加速させ、地球の裏側の出来事も瞬時に知ることができる時代になって久し

経営戦略に社会貢献を取り入れることが利益に繋がる、最新の情勢

『トレイルブレイザー』(開拓者)は、世界最大のCRMメガベンチャーであるSalesForce創始者マーク・ベニオフの自伝的企業経営ノウハウを記した本。とくに社会貢献~CSV~SDGsといった近年の経営戦略の系譜について、自身の経験を踏まえてまとめられています。 SalesForceでは「1-1-1モデル」と呼ばれる、株式の1%と製品の1%、従業員の就業時間の1%を社会貢献に費やす方針を掲げています。それは企業戦略として、株式価値の向上やカスタマーサクセス、従業員の定着といっ

ビジネスが最優先でなくなった時代に

山口周さんの『ビジネスの未来~エコノミーにヒューマニティを取り戻す』を読みました。なんとなく感じていたことが見事に言語化されているとともに、ポスト資本主義やサスティナビリティといった日頃使いがちかつ大きめなワードに対する具体的な処方が腹オチした感じです。 日本という国の売りモノを考える資本主義とはある意味、時間のやり取りであって労働者は資本に対して時間を売り、また資本も事業や不動産など形にしたいものを早く実現するために金利を支払って調達するものです。その前提にあるのは、時間

店の語源は「見せ」、製造工程を見せることが信用に繋がった

宮本常一著『イザベラ・バードの旅『日本奥地紀行』を読む』のご紹介です。『日本奥地紀行』は面白いですが読むには難解な部分もあるため、民俗学者・宮本常一さんの視点で解説してもらえると解像度が格段に上がって、明治時代になったばかりの日本の姿が浮かび上がってきます。 男性が子育てにコミットする地域社会私は、これほど自分の子どもをかわいがる人々を見たことがない。子どもを抱いたり、背負ったり、歩くときは手をとり、子どもの遊戯をじっと見ていたり、参加したり、いつも新しい玩具をくれてやり、

『ザリガニの鳴くところ』からアメリカ大統領選挙を読み解く

現在、アメリカ大統領選挙の真っただ中であり、トランプ大統領の再選か、あるいはバイデン候補が政権を奪取するのかに注目が集まっています。鍵を握るのは「ホワイト・トラッシュ」と呼ばれる白人労働者階級であり、そのほとんどはトランプ大統領を支持していると言われています。 反ソ⇒反日⇒反中の系譜白人労働者階級は古くはヒルビリーと呼ばれ、工業地帯であった中部を中心に保守層を形成してきました。『ヒルビリーエレジー』という本にその暮らしぶりは詳しく載っています。ベトナム戦争後のカウンターカル

不思議の国・日本を旅した英国人

イザベラ・バードという英国人女性をご存じでしょうか?明治時代の1878年、西南戦争が起こった翌年に日本にやってきて、東北~北海道に至る奥地を旅した冒険家です。当時の日本の様子を脚色なく表現した内容は、日本人こそが知るべき隠された歴史と言えるでしょう。 賊軍の地として虐げられた東北地方イザベラ・バードは文明開化に沸き立つ横浜に上陸後、東京を経て日光に向かいます。日光には2週間程度逗留し、東照宮や中禅寺湖、奥日光の景勝地を巡っています。バードが宿泊したのは現在の金谷ホテルの前身

私的平成史「テロ・不況・災害」

平成から元号が変わる(と予め分かっている)ので、テレビも新聞も平成を総括する特集を組んでいますね。個人的にも、この30年間を振り返ってみようと思います。 オウム真理教・阪神大震災平成が始まった年、ちょうど小学校を卒業して中学校に進学するタイミングでした。そのときに勃興していたのがオウム真理教。選挙に多数の候補者を送り込んだりしていて、街宣車が「しょ〜こ〜」という歌を流しながら走っていたのが印象的でした。秋葉原に遊びに行くと、ちょうどオウム信者のような人々が中古PCを売ってい

北条早雲を大河ドラマにしてほしい

日本三大梟雄といえば、北条早雲・斎藤道三・松永久秀と言われています。うち、斉藤道三と松永久秀は今年の大河ドラマ『麒麟がくる』で登場しており、悪人とは言えないような人間味溢れるイメージで魅力的なキャラクターに仕上がっています。 捏造された乱世の梟雄イメージ斎藤道三にしても松永久秀にしても、後世に創作された軍記物などの影響で悪役として描かれており、それらが近年の古文書研究が進むにしたがって違った実像が明らかになってきています。大河ドラマもこれら時代考証を基にしてシナリオがつくら

応仁の乱の勝者とは誰か

ゴールデンウィークはひたすら来るべき乱世に向けて、歴史から学ぶべく読書をしていました。そして、乱世と言えばこの本を取り上げないわけにはいきません。 曖昧な東軍と西軍の境界応仁の乱は、1467年から京都を中心に11年も続いた大乱です。よく、京都の人が「先の戦争で~」と言うときは応仁の乱のことを指すといった笑い話がありますが、実際に京都市中が戦場となったのは後にも先にもこの応仁の乱だけでしょう。細川勝元を中心とした東軍と山名宗全を中心とした西軍が、畠山氏や斯波氏の内紛や将軍家の

武田氏はどうして滅びたのか

戦国最強の大名として知られる武田氏は、1582年に織田軍の侵攻を受けて滅ぼされます。名将・信玄の後を継いだ勝頼は愚将という扱いをされてきましたが、近年になって再評価される動きもあります。実際に勝頼の代においては、甲斐・信濃に加えて駿河や上野までも版図に加え最大の勢力を誇っていました。 長篠の戦いは鉄砲の勝利だった?武田氏が滅亡に至るプロセスについては、大きく3つのエピソードが関係しています。まずは長篠の戦い、これは武田騎馬隊が織田徳川鉄砲隊に負けた、旧来の武家が足軽に敗れた