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野良猫の地域おこし研究

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地域活性化・地域おこしに必要な視点や、独自の強みを見出すための方法論についてまとめています。
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脱「地域活性化」縮小均衡の時代へ

全国各地に地方創生や地域活性化といった言葉が駆け巡り、久しいです。多くの自治体が高齢化や過疎化といった人口動態の問題を掲げ、人口ビジョンという目標を設定して移住等の社会増加および出生率向上等の自然増加を目指しました。 雇用創出、若者誘致、SNS活用という正義これら地域活性化に対する取組みとして、半ば常套句のように語られる文言が存在します。「ローカルビジネスの拡大することで雇用を創出する」「イベントや体験を通して若者に地域の魅力を知ってもらう」「SNSを活用することで地域のフ

山を使い倒す、新しい林業の形

キャンプブームが始まって久しく、中には山を購入して自分専用のキャンプ場にする動きも見られるようになりました。森林レンタルやサブスクリプションによるキャンプ利用といった多様な事業モデルも登場しており、この森林のソフト利用としての価値向上が図られています。 山は誰のものか一方で気になるのは、一時的なブームによって山にやってきた都市住民が、ゴミや騒音によって地域に迷惑をかけるかもしれない短期的な問題と、不在地主から山林を購入した人が果たして間伐や獣害対策等の土地管理を行ないつつ長

EVが普及すれば電力不足は解消される

3月16日に東北地方を中心に発生した地震の影響で、昨日(3月22日)は東京電力・東北電力管内において初の「電力需給逼迫警報」が出されました。福島県沿岸部の火力発電所が被害を受けて休止していたこと、季節外れの低温によって暖房需要が急増したこと、曇天によりほとんど太陽光発電ができなかったことなど、複合的な要因が重なって綱渡りの状況となりました。 「電力が足りないのにEV普及できるか」という誤解 この状況下において、SNSなどでは「今後EVが普及したら、電気がもっと足りなくなる

地方移住には自動車が必須だ

地方に移住したいという相談をしばしば受けるのですが、とくに都市部で暮らしている人には運転免許を持っていなかったり、ペーパードライバーの割合が結構高いです。観光や仕事でときどき地方に行く程度であれば必須ではないですが、移住となれば必須だと断言できます。 自動運転が期待できない理由こういったシビアな話をすると、「あと5年もすれば自動運転が〜」とか希望的観測が聞かれます。自動運転の導入については私も期待している立場ですが、あと20年は難しいだろうと現実的な見立ても持っています。

モテる地域、モテない地域

この秋はワーケーションのモニター調査で、何ヵ所かの地域に滞在しました。奈良県奈良市、京都府京都市、山梨県甲府市、広島県福山市、広島県神石高原町、北海道ニセコ町、愛知県名古屋市、三重県鳥羽市、兵庫県新温泉町と様々な特徴のある地域を訪問しました。 ワーケーションの7類型「ワーケーション=ワーク(仕事)×バケーション」の造語であることは、菅首相が会見などでも言及して認知度も広まってきています。一方で地域に足を運びつつもホテルなどに籠って仕事をしているのは、単なる出張のような扱いに

東京以外の地方が生き残るために取るべき戦略とは

このようなエントリーは定期的に話題になりますね。東京と地方の格差を嘆き、その叫びが更なる分断を生んでいく連鎖。個人的には、日本という国のせいにするヒマがあったら、他者との相対評価のなかで自分の幸せを見つけようという、自分自身にかけられた呪いを解くことをおススメします。 日本から捨てられた土地など存在しない実は、この書き手の出身地のような地域のまちづくりを担ったことがあります。北海道など北国の自治体はどこもそうですが、行政予算の半分以上が国からの交付金で賄われており、さらに除

Niziプロジェクトが地域活性化に必要だ

11月の本格デビュー前から大きな話題を集めるNiziU。メンバーは全員日本人でありながら、K-POPと韓国風メイク、完成度の高い歌と踊りといった、ヒットメーカー・J.Y.Parkによるプロデュースを経て「ダイヤの原石」たる少女たちがアイドルへと成長する過程が感動と共感を生んでいます。 過程が結果を作って、態度が成果を生むNiziプロジェクトはアイドル発掘のオーディションであり、そのフォーマット自体は昭和の頃からあるものです。特徴があるとすれば、J.Y.Park氏の独断で1万

まちづくり先進地に生まれ変わった西成

西成・あいりん地区といえば、日本有数のドヤ街でありたびたび暴動が起こる不穏な場所として語り継がれてきました。日雇い労働者が集まり、バブル崩壊とともにその人々がホームレスと化し、「一般人が行くと身ぐるみはがされる」「道端で覚せい剤が売られている」といった噂に尾鰭がついた状態で、ディープ大阪の象徴のような存在となってきました。 あいりん地区が抱える構造的課題もともとは新今宮駅前のあいりん総合センターに、日雇い労働者を斡旋する寄せ場とハローワーク、そして病院など公共施設が複合化さ

国破れて山河あり

経済的に厳しい状況が日本全国を覆っています。多くの企業やビジネスパーソンにとって、事業の見直しや働き方の変化を余儀なくされていることでしょう。これまで通りに戻ることはない、不可逆的な変革をどのように志向していけばよいのでしょうか。 after/with/beyondではなくNewNomal世間では、感染症後の社会を予測したり、感染症とどのように付き合っていくかといった議論が始まっています。個人的には、すでに東日本大震災前後からローカルに軸足を移し、複数の仕事を兼務する形でリ

緊急事態宣言と移住施策

8日にも史上初の緊急事態宣言が発出される見込みとなり、それに伴って108兆円もの経済対策が行なわれることになりそうです。緊急事態宣言は東京都を中心に首都圏、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県を対象として、住民の外出自粛要請やイベントの中止延期、特定業種の事業休止が都道府県知事の権限で進められることになります。 地方にとっては千載一遇のチャンスそれとともに、大学の授業がオンラインとなって実家に戻る学生たちが増えたり、感染の拡大や混乱を恐れて実家に疎開する子育て世帯が顕在化してい

地方大卒を地元就職させる唯一の方法

所属する地方大学においては、というよりも現在の地方国公立大学にとって大きなミッションの1つとなっているのは、地元就職率を上げることです。地方創生政策の一環として、若者の都市部とくに首都圏への流出を防ぐ名目の下、運営費交付金など様々な補助金のKPIに地元就職率が入っています。 偏差値が上がると人は流動しやすい結論から言えば、入試偏差値を下げれば地元就職率は上がります。マイナビが公開している地元就職率のデータでは、高校と大学の所在都道府県が同一の人は、70%程度地元就職すること

地域活性化を目指さない

noteでバズっている記事を読みました。この書き手はあるワークショップに参加した際に、スタッフといざこざがあってその顛末を書かれているようですが、それらのタイトルに「地域活性」「地方創生」というような言葉が入ると、主語が大きくなって様々な場所で行なわれているようなイベント・ワークショップに当てはまるということでしょうか。 東京⇔地方の対立構図の無意味さこういった批判に付き物なのが、東京のコンサルやその地域に責任を持たない人々が地方を食い物にしているというようなステレオタイプ

日本の西の果て・与那国島

与那国島に行きました。日本最西端の島、という以外に何があるのかといえば、与那国馬という在来種だったり、海底宮殿と呼ばれる特徴的なダイビングスポットが有名です。 日本人のルーツの1つ、台湾~与那国ルート今回、与那国島に行こうと思った理由は、日本人のルーツを辿る科学博物館のプロジェクトを見たからです。台湾から丸木舟で与那国島まで航海できるのか、その再現が実施されました。 実際に与那国島近辺は黒潮の影響で海が荒れやすく、そのため長い間与那国は独立を保っていました。16世紀に琉球

若い頃の旅の重要性

久しぶりに東南アジアを巡って、学生時代のバックパッカーの頃の感覚が蘇ってきました。20年も前になるので、当時はあまりインターネットも発達しておらず、知らない土地で行き当たりばったり良くやっていたな~と思います。 大人になると、創意工夫を失うさすがに40代にもなると、旅にも慣れてきて様々なトラブルにも臨機応変に対応できてしまいます。その臨機応変というのが曲者で、だいたいはお金で解決というやり方になってしまうので、お金がない頃にどうやって試行錯誤して解決したのかがあまり思い出せ