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野良猫の地域おこし研究

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地域活性化・地域おこしに必要な視点や、独自の強みを見出すための方法論についてまとめています。
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記事一覧

『地方創生2.0』とは何か

10月より石破茂・第102代内閣総理大臣が誕生し、新たな政策をスタートさせています。私自身、初代地方創生担当大臣だった石破さんの下で地方創生シティマネージャーとして地方自治体の総合戦略策定に携わった経験があり、この10年の地方創生政策にまつわる栄枯盛衰を見てきました。 従来の延長線では厳しい地方創生政策石破首相が地方創生をライフワークとしてきて、またそれをアップデートすることに本気であることは、人事を見ていても確認できます。事務方トップである官房副長官・内閣人事局長に旧自治

人がいないなら、動物を活かせば良いんじゃない?『限界集落の経営学』

地方創生⇒デジタル田園都市構想と、看板が完全にかけ代わってしまった感のある昨今、地方ではバス路線が減少し宿泊施設が軒並みコロナ後の需要増に耐え切れず、飲食店は原材料高騰によって閉店が相次いでいます。もはや人材という最大の希少資源が失われている状況では、地方の存続すら危ぶまれていると言えます。 私自身もかつて限界集落と呼ばれる地域で活動したことがありますが、十数年経ってかなり様相が変わってきていると感じます。つまり、生き残る地域と衰退して消滅に向かう地域の二極化が進み、残酷な

最強のクマ対策=秋田犬の歴史

秋田県鹿角市で山菜採りに山に入った男性がクマに襲われて死亡し、その遺体を回収しようとした警察官が二次被害に遭いました。事態を重くみた県と市町村は緊急会議を開き、対策を協議しています。秋田県では連日各地でクマの出没情報が発生しており、例年に比べてもその頻度は高まっています。 マタギとともに暮らしてきた秋田犬秋田県といえば、秋田犬が有名です。国の天然記念物に指定され、世界でも注目されるその愛くるしい姿は、実はマタギとともに猟犬として厳しく育てられてきた歴史が創り出しています。厳

ダムの湖底に消えた奧三面集落

ドキュメンタリー映画『越後奧三面 山に生かされた日々』を観ました。舞台となった奧三面集落は新潟県北部、村上市から三面川を遡った朝日連峰の山中にありました。2001年に奥三面ダムが完成し、集落はダムの湖底に沈みました。 縄文の暮らしを色濃く残すマタギの里奥三面集落は小池、高橋、伊藤という3つの名字で構成される42戸150人の小さな村でした。ルーツは縄文時代とされ、実際に奥三面集落周辺には縄文から古墳時代にかけての数多くの遺跡が残されています。冬には2-5mもの積雪がある豪雪地

日本三大桜・三春滝桜

乗り物に乗っている時が最も読書が捗る性癖のため、青春18きっぷで桜前線を追いかけながら北上しました。桜の方はそんな人間の事情には付き合ってくれず、全国一斉に咲き始めた模様です。 10年ほど前に、福島県被災地の復興支援の仕事をしていました。その際にいつも通るのが三春町で、滝桜という樹齢千年とも言われる日本三大桜の古樹があることを知りました。なかなか花が咲くタイミングには来れず、またコロナ禍もあって訪問する機会がありませんでした。そんな経緯もあって、改めて桜の季節に三春に行くこ

「能登半島は見捨てるべき」なのか

元日に発生した能登半島地震、半月が経った現在でも水道や道路のインフラは寸断され、救助活動もままならない状況で復興などはさらに先の話になっています。一部では能登半島のような過疎地域に対して、多額の復興予算をかけてインフラや防潮堤などを整備するのはコスパが合わない、といった東日本大震災のときにも聞こえた議論が出始めています。 能登半島ほど生物多様性を象徴する場所はない個人的に、能登半島は数回訪れたことがあり、とても気に入っています。まず食べ物がとても美味しい、というのも日本海の

『地方創生』時代の終焉

10年以上ローカルの現場に携わってきて、コロナ禍が起こって完全に状況が置き換わった感があります。具体的には、地域のインフラをはじめとした様々な基幹構造がもはや持続不可能に陥っており、根本原因としての人手不足がのっぴきならないところまできている実感を、各地を再訪するなかで非常に強く感じます。 それとともに、従来の地方創生というデフレ経済下における政策パッケージが完全に機能しなくなっている実情も明らかになっています。国が国債を発行し、政府支出という税収の再分配から雇用創出や事業

阪神ファン、エスコンフィールド北海道に行く

「Boys be Ambitious(少年よ、大志を抱け)」と言ったクラーク博士、その言葉が発せられたのは北広島市にある旧島松駅逓所です。そこからほど近い場所に、北海道日本ハムファイターズの新たな本拠地・エスコンフィールド北海道が造られました。 折しもプロ野球セパ交流戦で、我らが阪神タイガースがこの地で戦うため、勇躍乗り込んできました。プロ野球ファンのみならず、観光客や地域住民が気軽に利用できる地域密着型のボールパークという大志を実現した理想郷を体験してきました。 阪神フ

脱「地域活性化」縮小均衡の時代へ

全国各地に地方創生や地域活性化といった言葉が駆け巡り、久しいです。多くの自治体が高齢化や過疎化といった人口動態の問題を掲げ、人口ビジョンという目標を設定して移住等の社会増加および出生率向上等の自然増加を目指しました。 雇用創出、若者誘致、SNS活用という正義これら地域活性化に対する取組みとして、半ば常套句のように語られる文言が存在します。「ローカルビジネスを拡大することで雇用を創出する」「イベントや体験を通して若者に地域の魅力を知ってもらう」「SNSを活用することで地域のフ

山を使い倒す、新しい林業の形

キャンプブームが始まって久しく、中には山を購入して自分専用のキャンプ場にする動きも見られるようになりました。森林レンタルやサブスクリプションによるキャンプ利用といった多様な事業モデルも登場しており、この森林のソフト利用としての価値向上が図られています。 山は誰のものか一方で気になるのは、一時的なブームによって山にやってきた都市住民が、ゴミや騒音によって地域に迷惑をかけるかもしれない短期的な問題と、不在地主から山林を購入した人が果たして間伐や獣害対策等の土地管理を行ないつつ長

EVが普及すれば電力不足は解消される

3月16日に東北地方を中心に発生した地震の影響で、昨日(3月22日)は東京電力・東北電力管内において初の「電力需給逼迫警報」が出されました。福島県沿岸部の火力発電所が被害を受けて休止していたこと、季節外れの低温によって暖房需要が急増したこと、曇天によりほとんど太陽光発電ができなかったことなど、複合的な要因が重なって綱渡りの状況となりました。 「電力が足りないのにEV普及できるか」という誤解 この状況下において、SNSなどでは「今後EVが普及したら、電気がもっと足りなくなる

地方移住には自動車が必須だ

地方に移住したいという相談をしばしば受けるのですが、とくに都市部で暮らしている人には運転免許を持っていなかったり、ペーパードライバーの割合が結構高いです。観光や仕事でときどき地方に行く程度であれば必須ではないですが、移住となれば必須だと断言できます。 自動運転が期待できない理由こういったシビアな話をすると、「あと5年もすれば自動運転が〜」とか希望的観測が聞かれます。自動運転の導入については私も期待している立場ですが、あと20年は難しいだろうと現実的な見立ても持っています。

モテる地域、モテない地域

この秋はワーケーションのモニター調査で、何ヵ所かの地域に滞在しました。奈良県奈良市、京都府京都市、山梨県甲府市、広島県福山市、広島県神石高原町、北海道ニセコ町、愛知県名古屋市、三重県鳥羽市、兵庫県新温泉町と様々な特徴のある地域を訪問しました。 ワーケーションの7類型「ワーケーション=ワーク(仕事)×バケーション」の造語であることは、菅首相が会見などでも言及して認知度も広まってきています。一方で地域に足を運びつつもホテルなどに籠って仕事をしているのは、単なる出張のような扱いに

東京以外の地方が生き残るために取るべき戦略とは

このようなエントリーは定期的に話題になりますね。東京と地方の格差を嘆き、その叫びが更なる分断を生んでいく連鎖。個人的には、日本という国のせいにするヒマがあったら、他者との相対評価のなかで自分の幸せを見つけようという、自分自身にかけられた呪いを解くことをおススメします。 日本から捨てられた土地など存在しない実は、この書き手の出身地のような地域のまちづくりを担ったことがあります。北海道など北国の自治体はどこもそうですが、行政予算の半分以上が国からの交付金で賄われており、さらに除