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野良猫の地域おこし研究

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地域活性化・地域おこしに必要な視点や、独自の強みを見出すための方法論についてまとめています。
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日本三大桜・三春滝桜

乗り物に乗っている時が最も読書が捗る性癖のため、青春18きっぷで桜前線を追いかけながら北上しました。桜の方はそんな人間の事情には付き合ってくれず、全国一斉に咲き始めた模様です。 10年ほど前に、福島県被災地の復興支援の仕事をしていました。その際にいつも通るのが三春町で、滝桜という樹齢千年とも言われる日本三大桜の古樹があることを知りました。なかなか花が咲くタイミングには来れず、またコロナ禍もあって訪問する機会がありませんでした。そんな経緯もあって、改めて桜の季節に三春に行くこ

「能登半島は見捨てるべき」なのか

元日に発生した能登半島地震、半月が経った現在でも水道や道路のインフラは寸断され、救助活動もままならない状況で復興などはさらに先の話になっています。一部では能登半島のような過疎地域に対して、多額の復興予算をかけてインフラや防潮堤などを整備するのはコスパが合わない、といった東日本大震災のときにも聞こえた議論が出始めています。 能登半島ほど生物多様性を象徴する場所はない個人的に、能登半島は数回訪れたことがあり、とても気に入っています。まず食べ物がとても美味しい、というのも日本海の

『地方創生』時代の終焉

10年以上ローカルの現場に携わってきて、コロナ禍が起こって完全に状況が置き換わった感があります。具体的には、地域のインフラをはじめとした様々な基幹構造がもはや持続不可能に陥っており、根本原因としての人手不足がのっぴきならないところまできている実感を、各地を再訪するなかで非常に強く感じます。 それとともに、従来の地方創生というデフレ経済下における政策パッケージが完全に機能しなくなっている実情も明らかになっています。国が国債を発行し、政府支出という税収の再分配から雇用創出や事業

阪神ファン、エスコンフィールド北海道に行く

「Boys be Ambitious(少年よ、大志を抱け)」と言ったクラーク博士、その言葉が発せられたのは北広島市にある旧島松駅逓所です。そこからほど近い場所に、北海道日本ハムファイターズの新たな本拠地・エスコンフィールド北海道が造られました。 折しもプロ野球セパ交流戦で、我らが阪神タイガースがこの地で戦うため、勇躍乗り込んできました。プロ野球ファンのみならず、観光客や地域住民が気軽に利用できる地域密着型のボールパークという大志を実現した理想郷を体験してきました。 阪神フ

脱「地域活性化」縮小均衡の時代へ

全国各地に地方創生や地域活性化といった言葉が駆け巡り、久しいです。多くの自治体が高齢化や過疎化といった人口動態の問題を掲げ、人口ビジョンという目標を設定して移住等の社会増加および出生率向上等の自然増加を目指しました。 雇用創出、若者誘致、SNS活用という正義これら地域活性化に対する取組みとして、半ば常套句のように語られる文言が存在します。「ローカルビジネスを拡大することで雇用を創出する」「イベントや体験を通して若者に地域の魅力を知ってもらう」「SNSを活用することで地域のフ

山を使い倒す、新しい林業の形

キャンプブームが始まって久しく、中には山を購入して自分専用のキャンプ場にする動きも見られるようになりました。森林レンタルやサブスクリプションによるキャンプ利用といった多様な事業モデルも登場しており、この森林のソフト利用としての価値向上が図られています。 山は誰のものか一方で気になるのは、一時的なブームによって山にやってきた都市住民が、ゴミや騒音によって地域に迷惑をかけるかもしれない短期的な問題と、不在地主から山林を購入した人が果たして間伐や獣害対策等の土地管理を行ないつつ長

EVが普及すれば電力不足は解消される

3月16日に東北地方を中心に発生した地震の影響で、昨日(3月22日)は東京電力・東北電力管内において初の「電力需給逼迫警報」が出されました。福島県沿岸部の火力発電所が被害を受けて休止していたこと、季節外れの低温によって暖房需要が急増したこと、曇天によりほとんど太陽光発電ができなかったことなど、複合的な要因が重なって綱渡りの状況となりました。 「電力が足りないのにEV普及できるか」という誤解 この状況下において、SNSなどでは「今後EVが普及したら、電気がもっと足りなくなる

地方移住には自動車が必須だ

地方に移住したいという相談をしばしば受けるのですが、とくに都市部で暮らしている人には運転免許を持っていなかったり、ペーパードライバーの割合が結構高いです。観光や仕事でときどき地方に行く程度であれば必須ではないですが、移住となれば必須だと断言できます。 自動運転が期待できない理由こういったシビアな話をすると、「あと5年もすれば自動運転が〜」とか希望的観測が聞かれます。自動運転の導入については私も期待している立場ですが、あと20年は難しいだろうと現実的な見立ても持っています。

モテる地域、モテない地域

この秋はワーケーションのモニター調査で、何ヵ所かの地域に滞在しました。奈良県奈良市、京都府京都市、山梨県甲府市、広島県福山市、広島県神石高原町、北海道ニセコ町、愛知県名古屋市、三重県鳥羽市、兵庫県新温泉町と様々な特徴のある地域を訪問しました。 ワーケーションの7類型「ワーケーション=ワーク(仕事)×バケーション」の造語であることは、菅首相が会見などでも言及して認知度も広まってきています。一方で地域に足を運びつつもホテルなどに籠って仕事をしているのは、単なる出張のような扱いに

東京以外の地方が生き残るために取るべき戦略とは

このようなエントリーは定期的に話題になりますね。東京と地方の格差を嘆き、その叫びが更なる分断を生んでいく連鎖。個人的には、日本という国のせいにするヒマがあったら、他者との相対評価のなかで自分の幸せを見つけようという、自分自身にかけられた呪いを解くことをおススメします。 日本から捨てられた土地など存在しない実は、この書き手の出身地のような地域のまちづくりを担ったことがあります。北海道など北国の自治体はどこもそうですが、行政予算の半分以上が国からの交付金で賄われており、さらに除

Niziプロジェクトが地域活性化に必要だ

11月の本格デビュー前から大きな話題を集めるNiziU。メンバーは全員日本人でありながら、K-POPと韓国風メイク、完成度の高い歌と踊りといった、ヒットメーカー・J.Y.Parkによるプロデュースを経て「ダイヤの原石」たる少女たちがアイドルへと成長する過程が感動と共感を生んでいます。 過程が結果を作って、態度が成果を生むNiziプロジェクトはアイドル発掘のオーディションであり、そのフォーマット自体は昭和の頃からあるものです。特徴があるとすれば、J.Y.Park氏の独断で1万

まちづくり先進地に生まれ変わった西成

西成・あいりん地区といえば、日本有数のドヤ街でありたびたび暴動が起こる不穏な場所として語り継がれてきました。日雇い労働者が集まり、バブル崩壊とともにその人々がホームレスと化し、「一般人が行くと身ぐるみはがされる」「道端で覚せい剤が売られている」といった噂に尾鰭がついた状態で、ディープ大阪の象徴のような存在となってきました。 あいりん地区が抱える構造的課題もともとは新今宮駅前のあいりん総合センターに、日雇い労働者を斡旋する寄せ場とハローワーク、そして病院など公共施設が複合化さ

国破れて山河あり

経済的に厳しい状況が日本全国を覆っています。多くの企業やビジネスパーソンにとって、事業の見直しや働き方の変化を余儀なくされていることでしょう。これまで通りに戻ることはない、不可逆的な変革をどのように志向していけばよいのでしょうか。 after/with/beyondではなくNewNomal世間では、感染症後の社会を予測したり、感染症とどのように付き合っていくかといった議論が始まっています。個人的には、すでに東日本大震災前後からローカルに軸足を移し、複数の仕事を兼務する形でリ

緊急事態宣言と移住施策

8日にも史上初の緊急事態宣言が発出される見込みとなり、それに伴って108兆円もの経済対策が行なわれることになりそうです。緊急事態宣言は東京都を中心に首都圏、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県を対象として、住民の外出自粛要請やイベントの中止延期、特定業種の事業休止が都道府県知事の権限で進められることになります。 地方にとっては千載一遇のチャンスそれとともに、大学の授業がオンラインとなって実家に戻る学生たちが増えたり、感染の拡大や混乱を恐れて実家に疎開する子育て世帯が顕在化してい