サイエンスとプラグマティズムの間で
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第八話:斐伊川に流るるクシナダ姫の涙
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『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』
「二本の木の棒が流れてくるわ。」
肥川のほとりで、雲国の皇女クシナダ姫は二本の木の棒が流れてくることに気が付いた。雲国に住む農民たちは箸を使う習慣はなく、クシナダ姫も海の向こうに住む異民族がこの箸というものを食事の際に使うのだと聞いたことがある。
「わしの妻になれ。」
そこに一人の男がやってきた。名をスサノオという。スサノオはクシ
第七話:日野川と国引き
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『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』
「八叉のオロチは火ノ川に住んでいる。」
コノハナサクヤ姫は子どもの頃から、言い伝えを聞いていた。火ノ川では度々洪水が発生しており、その度にオロチが来たと農民たちは怖れている。火ノ川では下流域に砂が蓄積し、砂洲や砂の自然堤が多く形成されている。そしてそれらは火ノ川の気まぐれで流路を変え、度々農民たちの暮らしを脅かしていたのだ。まさにオ
第六話:千代川の砂を生むもの
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『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』
「まるで馬の背のようね。」
千谷川の河口には、まるで砂漠のような洲が形成されている。そこには北風によって築かれた砂の山があり、地元の民は「馬の背」と呼んでいた。海に向かって断続的に砂丘が続いており、高くなった砂丘の頂上からは大山や隠岐まで見えた。低地には入海が広がって湿地帯となっており、渡り鳥や様々な生き物たちが羽を休めている。人々
第五話:九頭竜川の暴れオロチ
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『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』
「またオロチ様が出たのですか。」
ミヅハノメは農民たちとともに河岸を見て回っている。川は上流から大量の土砂を運び、それによって自身の流れを変えていく。大蛇のごとき暴れ方をするこの川では河岸の堤はすぐに崩れてしまうため、人々はこの川を「崩れ川」と呼んでいた。
ミヅハノメは過去四人の女性が志半ばで亡くなった記憶を持っている。自分自身も
第四話:手取川を取り巻く河畔の森
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『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』
「このご縁が末永く幸せに続きますように」
ククリ姫は若い二人の新婚夫婦に声をかける。新婦とは幼い頃から恋話を続けてきた仲であり、相談に乗っては話しかけるきっかけ作りに協力していた。いつしかククリ姫の周囲には、恋に恋する乙女たちが集まるようになっていた。
ククリ姫には秘密がある。自身のなかにヌナカワ姫とアキ姫、セオリツ姫の記憶が残っ
第三話:神通川の流れを包む
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『斐伊川に流るるクシナダ姫の涙』
「次は鵜坂神社でお神楽を舞う準備をしなければなりません。」
セオリツ姫は、巫女として多久比禮志神社と鵜坂神社を忙しそうに行き来している。売比川を挟んで東西に位置する神社において、それぞれ神職を担っている。これまでも数多くの故人たちの口寄せをしてきたが、中でも鮮明に印象に残っているのは越国のヌナカワ姫と科野国のアキ姫だ。大陸から戦略物