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野良猫の地域おこし研究

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地域活性化・地域おこしに必要な視点や、独自の強みを見出すための方法論についてまとめています。
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#地域活性化

『地方創生』時代の終焉

10年以上ローカルの現場に携わってきて、コロナ禍が起こって完全に状況が置き換わった感があります。具体的には、地域のインフラをはじめとした様々な基幹構造がもはや持続不可能に陥っており、根本原因としての人手不足がのっぴきならないところまできている実感を、各地を再訪するなかで非常に強く感じます。 それとともに、従来の地方創生というデフレ経済下における政策パッケージが完全に機能しなくなっている実情も明らかになっています。国が国債を発行し、政府支出という税収の再分配から雇用創出や事業

脱「地域活性化」縮小均衡の時代へ

全国各地に地方創生や地域活性化といった言葉が駆け巡り、久しいです。多くの自治体が高齢化や過疎化といった人口動態の問題を掲げ、人口ビジョンという目標を設定して移住等の社会増加および出生率向上等の自然増加を目指しました。 雇用創出、若者誘致、SNS活用という正義これら地域活性化に対する取組みとして、半ば常套句のように語られる文言が存在します。「ローカルビジネスを拡大することで雇用を創出する」「イベントや体験を通して若者に地域の魅力を知ってもらう」「SNSを活用することで地域のフ

山を使い倒す、新しい林業の形

キャンプブームが始まって久しく、中には山を購入して自分専用のキャンプ場にする動きも見られるようになりました。森林レンタルやサブスクリプションによるキャンプ利用といった多様な事業モデルも登場しており、この森林のソフト利用としての価値向上が図られています。 山は誰のものか一方で気になるのは、一時的なブームによって山にやってきた都市住民が、ゴミや騒音によって地域に迷惑をかけるかもしれない短期的な問題と、不在地主から山林を購入した人が果たして間伐や獣害対策等の土地管理を行ないつつ長

モテる地域、モテない地域

この秋はワーケーションのモニター調査で、何ヵ所かの地域に滞在しました。奈良県奈良市、京都府京都市、山梨県甲府市、広島県福山市、広島県神石高原町、北海道ニセコ町、愛知県名古屋市、三重県鳥羽市、兵庫県新温泉町と様々な特徴のある地域を訪問しました。 ワーケーションの7類型「ワーケーション=ワーク(仕事)×バケーション」の造語であることは、菅首相が会見などでも言及して認知度も広まってきています。一方で地域に足を運びつつもホテルなどに籠って仕事をしているのは、単なる出張のような扱いに

Niziプロジェクトが地域活性化に必要だ

11月の本格デビュー前から大きな話題を集めるNiziU。メンバーは全員日本人でありながら、K-POPと韓国風メイク、完成度の高い歌と踊りといった、ヒットメーカー・J.Y.Parkによるプロデュースを経て「ダイヤの原石」たる少女たちがアイドルへと成長する過程が感動と共感を生んでいます。 過程が結果を作って、態度が成果を生むNiziプロジェクトはアイドル発掘のオーディションであり、そのフォーマット自体は昭和の頃からあるものです。特徴があるとすれば、J.Y.Park氏の独断で1万

まちづくり先進地に生まれ変わった西成

西成・あいりん地区といえば、日本有数のドヤ街でありたびたび暴動が起こる不穏な場所として語り継がれてきました。日雇い労働者が集まり、バブル崩壊とともにその人々がホームレスと化し、「一般人が行くと身ぐるみはがされる」「道端で覚せい剤が売られている」といった噂に尾鰭がついた状態で、ディープ大阪の象徴のような存在となってきました。 あいりん地区が抱える構造的課題もともとは新今宮駅前のあいりん総合センターに、日雇い労働者を斡旋する寄せ場とハローワーク、そして病院など公共施設が複合化さ

地域活性化を目指さない

noteでバズっている記事を読みました。この書き手はあるワークショップに参加した際に、スタッフといざこざがあってその顛末を書かれているようですが、それらのタイトルに「地域活性」「地方創生」というような言葉が入ると、主語が大きくなって様々な場所で行なわれているようなイベント・ワークショップに当てはまるということでしょうか。 東京⇔地方の対立構図の無意味さこういった批判に付き物なのが、東京のコンサルやその地域に責任を持たない人々が地方を食い物にしているというようなステレオタイプ

地域おこしの極意とは何か?

立場的によく聞かれる言葉です。多くは過疎高齢化に悩んでいる地域住民であり、もう一方は地域おこしのような分野に関心のある若者だったり。果たして、この需要と供給のマッチングを上手くやれば地域課題は解決するのでしょうか? 行政主導の地域おこしが上手くいかない理由答えは【NO】です。そう簡単に解決するのであれば、日本中の地域が活性化しています。ならばどうして上手くいかないのか、多くの地域は課題からアプローチしているからだと考えます。みんな真面目だから、耕作放棄地をどうにかしようとか

まだ終わっていない公害・水俣病

科学技術が発展するトレードオフとして、取り沙汰されるのが環境汚染です。とくに公害と呼ばれる、高度成長期の日本における負の歴史は全国各地に現在も大きな傷跡を残しています。今回、水俣病で有名となった熊本県水俣市を訪問してきました。 企業都市・水俣の形成水俣市は熊本県南部、鹿児島県との境目に位置し、水俣川を中心に不知火海に面した漁村でした。遠浅の海からは多種多様な魚介類が水揚げされ、ここで暮らす人々の食生活は海産物が中心となっていました。 20世紀初頭、食糧増産と様々な化成品の

若者が地域に活路を見出す問題

「なぜ、若者は地域に行くのか。」というエントリーを読みました。 20代の大学生らしい、瑞々しい行動力と実践から学んでいく姿勢に、頼もしさと希望を感じました。かつての自分を見ているようだと述べるのは上から目線かつ批評的ですが、敢えてこのエントリーにツッコミを入れながら現在の地域おこしや地域活性化、地方創生といった分野を取り巻く諸問題を紐解いていきます。 小さな社会実験を地域でしかできない問題新しいこと、革新的なことを実証していくために、既得権益が少なく合意形成の容易な(絶対

汝の隣人を愛する教育

APU(立命館アジア太平洋大学)を視察しました。教育関係者の間では、グローバル教育の面で高い評価を受けている大学です。文科省関係者でも、グローバル教育ならばICU(国際基督教大学)かAIU(国際教養大学)かAPUかと言われています。 APUとはどんな大学か外国人留学生比率=50% 約6,000人の学生のうち半数が外国人留学生であり、教員も半数が外国人となっています。授業は英語と日本語の両方で行なわれており、キャンパス内でも英語と日本語が混ざったような会話が飛び交っています

大学で地域づくりを教える難しさ

昨年より、三重大学においてフィールドワーク等を通じて学生たちに地域づくりを指導しています。三重大学を含む地方国公立大学は、G型L型の議論を通じてL型志向つまり地域貢献を強める方針を明らかにしております。 地域貢献大学を目指す地方国公立大学は、医学部、農学部、工学部などの理系と、教育学部、文学部、法学部といった文系の学部を持っているところが多く、地域に対して貢献できる専門分野は幅広いと言えます。とくに医師や教員といった、地域住民の生活を支える専門職を育成する目的学部である医学

多様性の失われる街

乙武さんのエントリーを読んで、日本全国の街に多様性が失われている現実に改めて気づきました。だいたいどこの街も、路面店舗や個人商店は閉店に追い込まれ、大型商業施設やチェーン店による無個性な街並みが広がっています。 日本全国、ユニクロやニトリ、イオン、マクドナルドといったナショナルブランドで均質な商品やサービスを受けられ、セブン・イレブンやオリジン弁当は深夜まで営業して便利です。それらは確かに私たちの暮らしを豊かにしましたし、もはや公共サービスとも呼べるほどに多くの地域の基盤と

地方創生の次に来るもの

長年、地域おこし・地方創生分野に関わってきて、潮目が変わったことを感じます。政治的には地方創生担当大臣が変わるといった動きがありますが、まち・ひと・しごと創生総合戦略が改訂となってその方向性が大きくシフトしたことが大きいでしょう。 やる気のある地方を支援⇒中枢中核都市に集中へまち・ひと・しごと創生本部から地方創生シティマネージャーを委嘱された際には、過疎地域を中心に努力目標を課して意欲の高い自治体に対して競争的予算を配分するといった内容でした。奈井江町においても、地方創生推