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野良猫の地域おこし研究

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地域活性化・地域おこしに必要な視点や、独自の強みを見出すための方法論についてまとめています。
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#コラム

『地方創生』時代の終焉

10年以上ローカルの現場に携わってきて、コロナ禍が起こって完全に状況が置き換わった感があります。具体的には、地域のインフラをはじめとした様々な基幹構造がもはや持続不可能に陥っており、根本原因としての人手不足がのっぴきならないところまできている実感を、各地を再訪するなかで非常に強く感じます。 それとともに、従来の地方創生というデフレ経済下における政策パッケージが完全に機能しなくなっている実情も明らかになっています。国が国債を発行し、政府支出という税収の再分配から雇用創出や事業

EVが普及すれば電力不足は解消される

3月16日に東北地方を中心に発生した地震の影響で、昨日(3月22日)は東京電力・東北電力管内において初の「電力需給逼迫警報」が出されました。福島県沿岸部の火力発電所が被害を受けて休止していたこと、季節外れの低温によって暖房需要が急増したこと、曇天によりほとんど太陽光発電ができなかったことなど、複合的な要因が重なって綱渡りの状況となりました。 「電力が足りないのにEV普及できるか」という誤解 この状況下において、SNSなどでは「今後EVが普及したら、電気がもっと足りなくなる

モテる地域、モテない地域

この秋はワーケーションのモニター調査で、何ヵ所かの地域に滞在しました。奈良県奈良市、京都府京都市、山梨県甲府市、広島県福山市、広島県神石高原町、北海道ニセコ町、愛知県名古屋市、三重県鳥羽市、兵庫県新温泉町と様々な特徴のある地域を訪問しました。 ワーケーションの7類型「ワーケーション=ワーク(仕事)×バケーション」の造語であることは、菅首相が会見などでも言及して認知度も広まってきています。一方で地域に足を運びつつもホテルなどに籠って仕事をしているのは、単なる出張のような扱いに

東京以外の地方が生き残るために取るべき戦略とは

このようなエントリーは定期的に話題になりますね。東京と地方の格差を嘆き、その叫びが更なる分断を生んでいく連鎖。個人的には、日本という国のせいにするヒマがあったら、他者との相対評価のなかで自分の幸せを見つけようという、自分自身にかけられた呪いを解くことをおススメします。 日本から捨てられた土地など存在しない実は、この書き手の出身地のような地域のまちづくりを担ったことがあります。北海道など北国の自治体はどこもそうですが、行政予算の半分以上が国からの交付金で賄われており、さらに除

Niziプロジェクトが地域活性化に必要だ

11月の本格デビュー前から大きな話題を集めるNiziU。メンバーは全員日本人でありながら、K-POPと韓国風メイク、完成度の高い歌と踊りといった、ヒットメーカー・J.Y.Parkによるプロデュースを経て「ダイヤの原石」たる少女たちがアイドルへと成長する過程が感動と共感を生んでいます。 過程が結果を作って、態度が成果を生むNiziプロジェクトはアイドル発掘のオーディションであり、そのフォーマット自体は昭和の頃からあるものです。特徴があるとすれば、J.Y.Park氏の独断で1万

国破れて山河あり

経済的に厳しい状況が日本全国を覆っています。多くの企業やビジネスパーソンにとって、事業の見直しや働き方の変化を余儀なくされていることでしょう。これまで通りに戻ることはない、不可逆的な変革をどのように志向していけばよいのでしょうか。 after/with/beyondではなくNewNomal世間では、感染症後の社会を予測したり、感染症とどのように付き合っていくかといった議論が始まっています。個人的には、すでに東日本大震災前後からローカルに軸足を移し、複数の仕事を兼務する形でリ

日本の西の果て・与那国島

与那国島に行きました。日本最西端の島、という以外に何があるのかといえば、与那国馬という在来種だったり、海底宮殿と呼ばれる特徴的なダイビングスポットが有名です。 日本人のルーツの1つ、台湾~与那国ルート今回、与那国島に行こうと思った理由は、日本人のルーツを辿る科学博物館のプロジェクトを見たからです。台湾から丸木舟で与那国島まで航海できるのか、その再現が実施されました。 実際に与那国島近辺は黒潮の影響で海が荒れやすく、そのため長い間与那国は独立を保っていました。16世紀に琉球

地域おこしの極意とは何か?

立場的によく聞かれる言葉です。多くは過疎高齢化に悩んでいる地域住民であり、もう一方は地域おこしのような分野に関心のある若者だったり。果たして、この需要と供給のマッチングを上手くやれば地域課題は解決するのでしょうか? 行政主導の地域おこしが上手くいかない理由答えは【NO】です。そう簡単に解決するのであれば、日本中の地域が活性化しています。ならばどうして上手くいかないのか、多くの地域は課題からアプローチしているからだと考えます。みんな真面目だから、耕作放棄地をどうにかしようとか

板橋区民から見た『跳んで埼玉』

板橋区民は知名度で言えば下から数えた方が早いけど、かろうじて東京23区というポジションから埼玉県民を見下しています。板橋区から荒川を渡る道路は3本しかなく、それぞれが関所の機能を果たしています。(陸続きで和光市に入ることは考慮していない) 東京23区内の序列を気にするそんな板橋区は、東京23区内のヒエラルキーで言えば少なくとも下から2番目のつもりでいます。そう、あの足立区には勝てる!というのが共通認識となっています。足立区は荒川を越えて埼玉県寄りという認識であり、ヤンキーの

大学で地域づくりを教える難しさ

昨年より、三重大学においてフィールドワーク等を通じて学生たちに地域づくりを指導しています。三重大学を含む地方国公立大学は、G型L型の議論を通じてL型志向つまり地域貢献を強める方針を明らかにしております。 地域貢献大学を目指す地方国公立大学は、医学部、農学部、工学部などの理系と、教育学部、文学部、法学部といった文系の学部を持っているところが多く、地域に対して貢献できる専門分野は幅広いと言えます。とくに医師や教員といった、地域住民の生活を支える専門職を育成する目的学部である医学

多様性の失われる街

乙武さんのエントリーを読んで、日本全国の街に多様性が失われている現実に改めて気づきました。だいたいどこの街も、路面店舗や個人商店は閉店に追い込まれ、大型商業施設やチェーン店による無個性な街並みが広がっています。 日本全国、ユニクロやニトリ、イオン、マクドナルドといったナショナルブランドで均質な商品やサービスを受けられ、セブン・イレブンやオリジン弁当は深夜まで営業して便利です。それらは確かに私たちの暮らしを豊かにしましたし、もはや公共サービスとも呼べるほどに多くの地域の基盤と

地方創生の次に来るもの

長年、地域おこし・地方創生分野に関わってきて、潮目が変わったことを感じます。政治的には地方創生担当大臣が変わるといった動きがありますが、まち・ひと・しごと創生総合戦略が改訂となってその方向性が大きくシフトしたことが大きいでしょう。 やる気のある地方を支援⇒中枢中核都市に集中へまち・ひと・しごと創生本部から地方創生シティマネージャーを委嘱された際には、過疎地域を中心に努力目標を課して意欲の高い自治体に対して競争的予算を配分するといった内容でした。奈井江町においても、地方創生推

金足農に見る、地方創生の真価

高校野球、今年の夏の甲子園で台風の目になっているのは、秋田県代表の県立金足農業高校です。公立高校、全選手が地元出身、県大会からナインがフル出場という昔ながらの雑草集団が、都市部のセレクションで集められたエリート私立校を打ち破っていく快挙に、地方の星と盛り上がりを見せています。とくに終盤に逆転ホームランやサヨナラスクイズといった、劇的な勝ち方をしていることもあり、多くの高校野球ファンがその快進撃に驚いています。 なかでもエース吉田輝星投手は県大会から一人でマウンドを守り続け、

地方創生狂想曲が終わった後に

北海道の自治体アドバイザーをしていた時に、旧炭鉱のまちで2万人居た人口が5,000人を切ろうとしている急速な人口減少下において必要なのは、新機軸をブチ上げて地方創生を喧伝するのではなく、インフラや公共の機能複合化や統合効率化といった役割の見直しだと気づきました。 これまでの縦割りや機能分化によって、高度に発展してきた様々なシステムは歯車の逆回転に対応できておらず、メタボな組織になっていたり、無駄な公共施設が単機能で点在するといった状況を生み出しています。そのため、北海道では