環境問題の敵は、資本主義ではなく陰謀論
環境問題は人類共通の取り組むべき分野として、関心が広がってきています。とくに若年層においては、購買行動や職業選択においてもいかに環境に配慮しているかが企業を評価する基準となってきています。しかし、実は多くの取組みがファッション的、良いことをしている風になっているのも事実であり、グリーンウォッシュにならない取組みが求められます。
近年、スーパーのレジ袋が有料になったり、コンビニのスプーンが木製になるといった取組みが広がりつつあります。これらは否定されることではありませんが、アクションとして環境負荷低減には必ずしも寄与していません。
エネルギー分野で進むデカップリング
とくに再生可能エネルギーの普及が進む電力供給分野では、すでに太陽光発電が火力発電のコストを下回っており、経済成長と環境負荷低減の両立(デカップリング)が可能となっています。それは多くの国において再生可能エネルギーに対する投資を進めるような法制税制が整備され、大手企業を中心に技術開発が行なわれてコスト低減が成った実例でしょう。
一方で急進的な環境団体などを中心に大手企業を敵視するようなキャンペーンを張る運動があったり、逆に温暖化はウソというような陰謀論に与する言説が未だに信じられていることも事実です。実際にトランプ現象のような分断が起こったのも、大手企業が利益を貪っているというポピュリズムが耳心地良いといった背景があるからです。
環境対応こそがイノベーションになる時代
『ネイチャー資本主義』では、とくに2020年代になって環境対応が大企業主導で進められ、多くの人々のライフスタイルや価値観を変えてきた実例が示されています。それとともに企業が自らの稼ぎ方を変え、本業として環境ビジネスを発展させていっている欧米の状況を横目で見ながら、未だにCSRやSDGsという傍流レベルでの取組みに留まっている日本企業を憂いています。
どうして日本企業の対応が遅れているのでしょうか。それは脱資本主義やマルクス主義への回帰などを主張する学者や思想家によるアジテーションがこれら環境活動と結び付き、大企業批判や市民運動として対立構造に陥れられたからだと説きます。これらオールドリベラル的な言説は10-20年前の常識に囚われており、むしろ主な消費購買層である20-30代に対しては環境配慮なマーケティングやサーキュラーエコノミーな商品設計がウケるのです。
とくにプラネタリーバウンダリーという観点においては、気候変動のための脱炭素よりも生物多様性の保全や窒素/リンの循環という課題の方がリスクが高いとされており、これら環境課題解決をいかに経済活動に内包していくかが問われています。
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