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「新しい資本主義」は、50歳以上の言うことを聞くな

昨年末に参加したイベントで、印象に残っているフレーズがあります。「50歳以上の言うことは聞くな」ということです。

岸田内閣「新しい資本主義」を巡る意見

50歳以上の意見を聞いたらダメだな~と思ったのは、岸田内閣が打ち出した「新しい資本主義」に関する議論です。多くの壮年層が訳知り顔で、「岸田総理は経済オンチだ」「新しい社会主義じゃないか」といった反対意見を開陳していました。株価が落ちたのも岸田内閣のせいだと言わんばかりに、グローバルな資本主義の変化に抗う姿勢が見て取れます。

個人的には、「新しい資本主義」の政策案は悪くないと考えています。とくに昨今の原油高や穀物価格の高騰によってインフレが起こっており、賃上げや国民の所得向上はきちんと目標を定めて目指すべき方向性だと感じています。もちろん、とくにヨーロッパ発のSDGsや脱炭素の流れは、ウクライナ危機のようなエネルギー安全保障とアフリカ市場というブルーオーシャンが前提であり、日本が安易に乗るべきではない価値観であるとも認識しています。

50歳以上の“昭和脳”と、競争しない若者たち

資本主義に対するアンチは社会主義である、と考えるのはソビエト連邦の存在があり東西冷戦の構造が記憶にある50歳以上の考え方でしょう。少なくとも21世紀現在においては、中国やロシアもある程度資本主義経済に組み込まれており、それ以外の選択肢はありません。むしろ北欧のような再分配の大きな福祉資本主義か、アメリカのような市場資本主義かといった資本主義の細分化が起こっています。

ベストセラー『人新世の「資本論」』の著者斎藤幸平氏のように、30代以下のスタンダードはポスト資本主義とも言える資本主義経済のアップデートに関心があります。それは環境や資源制約による成長の限界と、人口減少ではパイの奪い合いをしている場合ではないという価値観がメインなっているからです。

日本におけるポスト資本主義とは

企業努力による競争原理は否定されるべきものではありません。それによって技術革新や価格低下といった恩恵を消費者として受けられることは、多くの人々が認識しています。しかしそこに欠落しているのは、労働者としての視点なのではないでしょうか。スティグリッツが指摘しているように、企業のシェアが高まるにしたがって賃金や労働条件は悪化していきます。独占的な地位にある富裕層の金融資産による利潤が生産性向上による賃金上昇を上回る「r>g」というピケティのシンプルな数式も話題となりました。

日本においても、正社員が既得権益となっており、実質的な階級社会となってます。大手企業の正社員になるためには良い学歴を手に入れて、タテ社会の一員として振る舞う作法が要求されるのです。この昭和時代につくられたスタンダードでは、50歳以上のとくに男性は最強の存在と言えます。しかし社会を構成する大多数である女性や非正規労働者の献身や犠牲によって成り立っている観点が足りていません。

つまり、自助・共助・公助という3つの区分において、自助を強化することに依存してきた資本主義に対して、その再分配を原資とした公助が膨れ上がる一方で、家族<親族<隣近所<地域といったコミュニティにおける共助が、昭和時代から分断され続けてきたことに対する反省が必要となっています。

地域において副業的な共助の仕事を創出する

現在、この地域における共助の仕組みを強化すべく、Local Coopという組織の立ち上げを進めています。教育や福祉、環境、交通といった地域コミュニティ維持に必要な機能について、行政から切り離しつつ一定の市場原理を入れることで効率性を担保する社会実験のような取組みとなります。

北欧のような手厚い再分配による福祉資本主義か、それともスティグリッツの説く修正資本主義か、それらは参考にしつつも日本の伝統的な講や座の仕組みを応用したローカルコモンズのあり方について、実装していきながら考えを深めていきたいです。

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