分断後のアメリカはどこに向かうのか
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分断後のアメリカはどこに向かうのか

Netflixで映画『ヒルビリー・エレジー』を観ました。合衆国中部のプア・ホワイト(貧困白人層)のリアルな暮らしと鬱屈、貧困が再生産されていく様子を描いたベストセラーの映像化です。

大統領が代わって起こること

アメリカ合衆国では、バイデン新大統領が誕生しました。プア・ホワイトと呼ばれる貧困層に支持されてきたトランプ前大統領は、選挙後も様々な混乱をもたらしてホワイトハウスを去っていきました。民主党・リベラル派のバイデン大統領に代わったことで、パリ協定への復帰や経済停滞に対する巨額の直接給付など、様々な政策転換が見込まれています。

一方で外交面では、安倍前首相とトランプ前大統領ほどの親密さは期待できないでしょう。むしろ親中派とも言われるバイデン大統領にとって、日本のポジションは相対的に下がる可能性もあります。アメリカ国内での財政出動が大きくなれば、対ドルの円高が進むリスクもあり日本にとっては決して楽観視できない状況と言えるでしょう。愛犬家であり、保護犬を引き取ったバイデン大統領には個人的には好印象を持っていますが。

2050年、白人がマイノリティになる

トランプ政権下では、白人至上主義とも呼べるような排他的な政策が採用されました。ヒスパニック系を締め出すためにメキシコとの国境に壁をつくるといった、強固な移民規制はバイデン政権に代わった途端に撤廃されました。これら人種に根差した分断は、今後も困難な局面を迎えることでしょう。実際に選挙違反があったとして首都ワシントンでの抗議デモでは死者が出ました。

アメリカ南北戦争は北部と南部での黒人奴隷の扱いが原因で勃発しましたが、今後南西部を中心にヒスパニック系の人口が増加するにしたがって、北東部の貧困白人層との軋轢がひどくなることも考えられます。GAFAMを中心に多様性こそがIT系ビジネス面での強みになる西部と、シェールガスや自動車産業といった旧来型の産業構造に組み込まれた東部との格差はさらに拡大していくことでしょう。

社会主義によって世代間格差の是正を望む若年層

また年齢による世代間の格差も広がっており、若年層を中心に民主社会主義と呼ばれるような左派的な政策が求められています。国民皆保険や最低賃金引上げといった、感染症下の経済情勢も相まった悲痛な声が政治への影響度も高めています。

一方でこれら左派的政策は“大きな政府”を志向するものであり、巨額の財政出動はドルの国際通貨としての信用を棄損するリスクもあります。経済的にも中国の影響度が増している情勢において、どこまで内向きに政策を展開できるのかというバランス感覚が求められます。「アメリカ・ファースト」を掲げてきたトランプ政権よりも国内経済を活性化させるのは容易ではありません。

非白人・若年層の影響力が強まる

これらの人種・世代間におけるパワーバランスの変化によって、恐らくは早いタイミングでアメリカの政治体系が混乱することも十分考えられます。くすぶり続けるバイデン大統領の健康問題と併せて、感染症対策や五輪といった目先の課題に追われるうちに中長期の戦略を打てないといった状況となる可能性は高いです。日本の菅政権のように、厳しい舵取りを迫られることは確定しているわけですから、支持率が高くなる要素はないでしょう。

変化が必然となった時代において、政府や旧来型のヒエラルキーに期待する方が無理筋でしょう。バイデン新大統領に代わったとしても、この不可逆的な価値変容は継続していくものと考えられます。時代を切り拓くのは若者たちであり、また多様性のある社会の実現こそがアメリカらしさを表現することなのでしょう。

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にゃん
1977年シアトル生まれ。地域イノベーション企業家。林業合コン、棚田deセグウェイ等の過疎地ビジネスを経て、行政トップの右腕、大学教員と産官学を経験。犬猫が地域に生き残る寛容な社会を目指すネコウヨです。