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ウナギは日本人のせいで絶滅するのか

絶滅危惧種IBに指定されているニホンウナギの稚魚・シラスウナギの採捕量が激減しているニュースが話題となっています。昨年同時期に比べて1%程度と歴史的不漁になっており、資源保護の観点からワシントン条約締約国会議での国際取引規制対象になる可能性もあります。

ネットのマウンティング論が知らない現実

ネットで支配的なのは、「絶滅危惧種なのにウナギ価格高騰がニュースになっている」「日本人が絶滅に追い込んでいるのに水産庁もマスコミも報じない」といった、大衆の無知蒙昧と政府やマスコミの不作為を批判する論調です。

ニホンウナギが絶滅に向かっている根拠としては、水産庁が公表している国内採捕量の推移が40~50年前から激減しているというデータに基づきます。しかし、よくよく調べてみるとキチンとシラスウナギの資源量を調べ始めたのは1980年代からであり、それ以前のデータはクロコ(シラスウナギが成長して黒く着色したもの)も含む数となっています。

統計的に有意なデータにおける採捕量は、年度によって増減はありますがおおよそ20トン前後となっており、近年は減少傾向にあることが読み取れます。しかし、絶滅に向かって激減しているという表現には当たらないのが正しい見方でしょう。

シラスウナギ激減の原因は何か?

とはいえ減少傾向にあることに異論はなく、また今年のシラスウナギ採捕量激減については「すわ絶滅か!?」と騒ぎたくなる気持ちも分かります。しかし、昨年比1%という水準とウナギ漁以外にも寒波や積雪といった気象状況を鑑みると、黒潮大蛇行の影響が大きいと考えるのが妥当でしょう。

2005年(平成17年)以来12年ぶりの黒潮大蛇行により、マリアナ海溝付近で卵から孵化し、レプトケファルス幼生から成長しながら黒潮に乗って日本近海にやってくるシラスウナギの数も影響を受けます。ちなみに12年前の国内漁獲高も前年比50%の歴史的な不漁となっている一方で、2月以降の春先にシラスウナギの還流が遅れたという事情があります。

黒潮大蛇行を引き起こしているのは赤道付近の海水温が上がるラニーニャ現象に関係があり、気候変動の影響が大きく関わっているという研究結果も出ています。つまり、今後は黒潮の流れが継続して変わってしまうリスクも考えられ、それによってウナギを含む日本の漁業が大きな影響を受ける可能性も考えられます。

現時点での対策は悪くない

もちろん、人為的な乱獲や産卵環境の悪化といった影響も考えられます。これらについてはすでに水産庁や国土交通省も対策に動いており、以下のとおり乱獲防止や産卵環境回復を進めています。

・国際的な養鰻組合の設立と新規参入の制限
・日本各県におけるシラスウナギ採捕量の上限設定
・河川における産卵環境の回復と堰やダムの魚道確保

とくに今年からは実質的に養鰻業への新規参入が不可能となり、シラスウナギの購入に対しても流通経路を厳しくチェックされるといった規制がかけられています。当然、ウナギの価格は上がるでしょうし、既存事業者でも規模縮小や倒産といった影響が出てくることでしょう。

ウナギ完全養殖への道

もう1つ期待されるのが、ウナギ完全養殖による資源確保の可能性です。2010年に人工環境下での受精卵からの孵化に成功し、天然資源に依存しないウナギの繁殖~養殖の道が開かれました。

しかし、8年経ってもまだ完全養殖の実用化が進んでいない背景には、レプトケファルス幼生というプランクトン状態からシラスウナギに変態する生存率が著しく低いという課題が存在するからです。レプトケファルス幼生は細菌に弱く、また安定した水質環境を好むために実は海溝のような深海の低栄養状態が必要だと解明できたのは最近の話です。

そしてレプトケファルス幼生が成長するために必要な餌がマリンスノー(プランクトンの死骸)であり、そういった深海環境を人工的に再現し水質を維持し続ける研究開発に時間とコストが掛かっているというのが現状なのです。不都合な真実としては、このウナギ完全養殖の研究開発に対しては国の予算が数百億円規模で投下されており、この資本回収をするためにはある程度のウナギの価格が担保される必要があります。

まとめ

ニホンウナギは絶滅危惧種とはいえ、多産多死の生態であり養殖に適した魚種として古くから日本人に愛されてきました。不明点の多かった繁殖方法にも、近年目覚ましい研究成果の進展が見られており、執念とも言えるようなウナギ完全養殖も実用化の目途が立ちつつあります。

一方で、現在は天然資源に依存しているのは事実であり、気候変動や様々な要因を伴ってその資源量が減っている蓋然性が高いです。少なくとも人為影響の部分を改善していくためには、親ウナギの放流(メスの養殖)や産卵環境の改善といった地道な施策も不可欠でしょう。

ウナギは本来の高級食材として、ハレの日に食べるものとして楽しみつつ、ウナギに限らず海に囲まれた日本の海洋環境が変わってきており、それに伴って漁業が持続可能な方向にシフトしてきている現実をキチンと理解しながら、賢く消費していければ良いですね。

参考URL;

水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について

黒潮親潮ウォッチ「黒潮の変動がウナギに影響を与える?


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コメント1件

ニホンウナギ資源データが乏しく、近年、ようやくモニタリング調査しているところだと思います。今シーズンのシラス不漁も、資源枯渇とは別に、日本への来遊時期がずれていることにあります。
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