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ゴジラと『太陽の蓋』の“虚構vs現実”

映画『シン・ゴジラ』は今年最大のヒット作になりましたね。ここでも何度も紹介していますのでもはや語り尽した感もありますが、今回は別の映画を紹介したいと思います。太陽の蓋』は、東日本大震災における福島第一原発事故をテーマにして、内閣官房副長官の福山哲郎さんや内閣官房長官の枝野幸男さんが不眠不休で対応する様子が描かれています。これから秋にかけて、全国で上映開始されるようなので、『シン・ゴジラ』をご覧になった方は是非ともこの作品もご覧になってください。

まさにシン・ゴジラのキャストともシンクロしますが、こちらは現実に起こったことをノンフィクションでまとめたものです。登場人物も総理大臣・菅直人さんや“東日電力”の経営陣など、2011年当時の状況に即したキャスティングとなっています。東京と福島の現場の二軸で展開される内容は、5年前の緊迫感を思い出させるには十分です。

福島第一原発という“太陽”の蓋が消し飛んだ現実

2011年3月11日からの5日間は、まさに日本という国の存亡に関わる危機に見舞われていました。恐らく多くの人々が不安な気持ちを抱えながら、マスコミから伝わる情報を固唾を飲んで聞いていたことでしょう。しかし実際に福島第一原発で何が起こっていたのかについては、官邸ですらあまり把握していなかった現実が浮き彫りになっています。

3月12日に発生した一号機の天井を吹き飛ばした水素爆発、14日に発生した三号機の建屋全体を大破させた水素爆発、そして広範囲の放射能汚染をもたらした15日の二号機格納容器からの放射性物質放出と、この5日間で立て続けに原子力発電所の建屋が崩壊していく様子は、多くの国民にショックを与えました

政府は映画のようには機能しなかった

『シン・ゴジラ』では官房副長官である矢口蘭堂の下、官民一丸となった「ヤシオリ作戦」が展開されました。各省庁から抜擢された変わり者集団がゴジラの弱点を見抜き、その対策に奔走する様は観客に勇気を与えました。

『太陽の蓋』においては、次々と爆発していく原発の様子をただ眺めるしかない政府の様子が克明に描かれています。自分は文系だから状況が分からないと言う原子力安全保安院のトップ、官邸に対して情報提供をしない東日電力本店、そして痺れを切らして直接福島第一原発に乗り込む首相、、混乱に次ぐ混乱のなかで、それぞれの立場と利害が噛み合わない状況が明らかになっています。福島第一原発からの撤退を主張する東日電力本店と撤退は許さないと迫る政府の対決は、勇気ある現場の決死隊によって救われたのでした。

最悪のシナリオに至らなかったのはホントに幸運でした。もし四号機に残されていた使用済み核燃料まで溶融していたら、250km圏内つまり首都圏まで人が住めない状況になっていました。プルサーマル計画の破たんや汚染水の問題など、現在も問題が解決できているとは到底言えません。私たちは人工の太陽にまだ蓋をできているわけではないのです。


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