なぜイスラム教の国には犬がいないのか
インドネシア・スマトラ島最北端のバンダアチェに来ています。インドネシアは中東に近いエリアほどイスラム教徒の数が多くなると言われ、アチェ州では実に95%がイスラム教徒だそうです。
イスラム教の禁忌
日本人にとっては、イスラム教は何だか不気味な宗教という印象ですが、その中身はとても禁欲的で保守的です。女性は外出する際には肌を見せてはならず、男女の婚前の恋愛は手を繋ぐことすら禁止、豚肉や酒類も口にすることはできません。
最近こそ金融機関が投資商品を売っていますが利子を付けることはできず、一日5回メッカの方角に向かって礼拝するといった習慣があります。そして、街角には猫は良く見かけるのですが、犬がまったくいないことに気づきます。
イスラム教国が犬を嫌う理由
イスラム教において、豚と犬は不浄の存在とされています。アラーの思し召しという理由ですが、現在でも物議を醸す存在となっています。実際に猫は可愛がっているのに、犬をこれほどまでに嫌う合理的な理由が分かりません。
イスラム教では、犬は唾液を垂らす存在として忌み嫌われています。唾液は狂犬病の象徴であり、実際にインドネシアでは定期的に狂犬病の大流行が野犬によって引き起こされるようです。最近では1992年に1000人以上が死亡する大流行が発生しています。
もちろん犬が悪いと言うよりは公衆衛生の問題ですから、近年ではイスラム教国でも犬に対して寛容的になっているところもあるようです。盲導犬や警察犬といった使役動物としても役に立つわけですから、イスラム教徒の愛犬家が増えていくかもしれません。
イスラム教で豚肉を食べない理由
同様に豚も不浄の動物として、イスラム教国では忌み嫌われています。一方で牛肉はタブーではなく、オーストラリアやニュージーランドから輸入されたビーフがインドネシアでも好まれています。
イスラム教国は砂漠地帯であり、豚のような大量の水を必要とする動物は環境負荷が大きいと考えられます。牛のように使役や乳も利用できるわけでもなく、ただ肉を得るために豚を畜養することは贅沢と考えられたということでしょうか。
ただタブーをそのまま受け止めるのではなく、その文化背景や気候風土を分析すると、より理解が深まるかもしれません。