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モテる地域、モテない地域

この秋はワーケーションのモニター調査で、何ヵ所かの地域に滞在しました。奈良県奈良市、京都府京都市、山梨県甲府市、広島県福山市、広島県神石高原町、北海道ニセコ町、愛知県名古屋市、三重県鳥羽市、兵庫県新温泉町と様々な特徴のある地域を訪問しました。

ワーケーションの7類型

「ワーケーション=ワーク(仕事)×バケーション」の造語であることは、菅首相が会見などでも言及して認知度も広まってきています。一方で地域に足を運びつつもホテルなどに籠って仕事をしているのは、単なる出張のような扱いになるわけで、より地域を理解しつつ新しいアイデアや関係性を構築することが期待されます。

一社)日本ワーケーション協会によると、ワーケーションには7つのタイプがあるそうです。内容や対象者、滞在日数によってそれぞれ目的が異なってくるようで、受入れ地域においてもそれらに対応できる準備を進めていく必要があります。

観光の延長線では足りない要素

ワーケーション誘致において多いのは、コロナ禍による観光客の激減によって打撃を受けたホテルや旅館といった宿泊業者が、中長期滞在を核にしたプログラムで何とか売上げを確保したいという思惑です。私が訪問した地域でも、例えば三重県鳥羽市や兵庫県新温泉町などは美味しい魚介類が獲れて温泉などでゆったりする、といった観光プログラムから派生した内容でした。

一方でこれらの地域においては、松阪牛や牡蠣、ずわい蟹といった特産品を振舞っていただき、数日間滞在する中では満足度の高い食を味わうことができました。しかし、これらの高級食材をたとえば1-2週間滞在する上で毎日食べたいかといえば、飽きるし経済的にもまったく合理的ではありません。

地元住民が日常的にどんな暮らしをしているか

むしろ中長期的な滞在においては地元住民と交流したり、そこの人々が日常的にどんなものを食べて何を楽しんでいるかといった暮らしを形成する要素について理解を深めたいと思います。そしてそれらがソフト的価値として、その地域の魅力やリピートして訪問したいモチベーションへと繋がっていくのではないでしょうか。

通常の人間関係と同じく、いろいろ着飾って自己PRを熱心にしているような段階は確かに必要かもしれませんが、それよりも普段着でどんな暮らしぶりをしているか何に興味があるのかといった価値観の部分で、人は興味を持ち関係性が持続していくのだと思います。

サスティナビリティを地域で表現する重要性

その意味においては、美味しい食材や観光名所といった要素はフックに過ぎず、むしろ地域住民の優しさや寛容性、歴史文化をどのように伝えて次世代に託しているのか、地域資源としての自然や経済に対するスタンスといった持続可能性に関わる要素を表現していく必要があります。

例えば観光業者が一生懸命たくさんの都市住民をワーケーションに誘致しても、地元住民がコロナ禍の不安を抱えて排他的になってしまえば、その地域が選ばれることはありません。もちろん感染症対策は必要ですが、より地域住民と交流しながら相互理解を深めていく取組みをプログラムしていくのが良いでしょう。社会不安によって分断しがちな世の中だからこそ、どっしりと多様な価値観を受け容れられる地域が選ばれるのです。

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