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なぜ海外ではSDGsが流行っていないのか

日本国内においては、SDGsという言葉は学校の教科書に載るほど浸透していきているのではないでしょうか。一方で海外に行くと、SDGsなる言葉は聞かないといった声もあります。果たしてSDGsという国際的な枠組みは、実は日本でしか通用しないガラパゴスなものなのでしょうか?

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SDGsが出てきた経緯

そもそもSDGsは、2015年国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に基づく、17のゴール・169のターゲットから構成された内容となっています。これは、2001年に提唱された主に開発途上国向けのMDGsを発展、全世界向けに拡大したものとして、日本を含む先進国においても「誰一人取り残さない」ことを目標としています。

このMDGs⇒SDGsの流れは、当時の国連事務総長コフィ・アナン氏の尽力があったとされます。とくにグローバル市場拡大の担い手であるビジネスセクターに対して、もっと環境や人権、格差是正にコミットするように呼び掛けたことによって経済界も動きました(もちろん、国連予算が各国からの拠出金だけでは賄えなくなったという裏事情もありますが)。

SDGsが検索される国、日本

翻って日本においては、この国連採択に基づきSDGsを国際協調の一部として取組むことを政府が宣言します。これは既存のODAなど国際経済協力をこのグローバルアジェンダに載せたいという思惑と、次の成長戦略が描きづらくなっている状況において、相対的に優位性のある日本のポジションを確立したい狙いがあったように思います。

一方で企業目線で言えば、SDGsは既存事業ですでに取組んでいる延長線上にあるとして、当初は自社の商品やサービスをそのまま17項目に当てはめるといった、ラベル付けのような内容が主流でした。企業担当者はSDGsの各アジェンダを一生懸命調べて、自社の取組みに適合させるといった作業に追われていました。

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世界各国における、検索ワードの分布

世界で検索されるワード「ESG」

世界では、年金や保険といった主に中長期な資本運用を行なう機関を中心にESG(Environment/Social/Governance)といった考え方を取り入れた投資が主流となってきています。気候変動による事業継続危機や、グローバルな調達に伴う人権侵害、組織内外における情報公開や格差是正といった様々な課題に対して、いかにリスクを取り除きつつ利益を拡大させるかという観点で資金調達が行なわれるようになっているのです。

これまでは企業として余裕のあるところがCSRやメセナといった観点で寄付や資金拠出を行なっていたところが、資本主義のド真ん中の部分が環境や格差是正、人権擁護といった分野に踏み込まなければ事業そのものの継続性が危うくなると考えられているわけです。つまり、日本のように広報やブランディングの一部としてSDGsを取り入れよう、といった動きとはかなり危機感のレベルが異なる動きになってきています。

欧米社会の置かれている状況

なぜ海外、とくに欧米ではこれほどまでにESGに注目が集まっているのでしょうか?ヨーロッパでは2010年代にギリシャ危機が発生し、またアフリカ諸国の社会情勢不安によって多くの難民がEU北部先進国に流入した経緯がありました。それによって労働者が雇用を奪われ、治安が悪化するといった直接的な影響を被ったため、人権や格差是正に対する経済界のコミットは自らの事業環境を守ることに繋がるコンセンサスが広がりました。

同様にアメリカでは、トランプ現象と呼ばれる白人低所得層が黒人やヒスパニック系の人々を差別する動きが急拡大して、分断が加速した経緯がありました。また西海岸では高温が続いて山火事が頻発し、降雨不足によって農業が成り立たないといった気候変動の影響も顕在化してきており、GAFAMのようなテック系企業を中心にESGを自らの事業目標に組み込む動きが出てきています。

日本でやるべきSDGsとは何か

翻って日本企業は、ほぼ均質で相対的な格差が少ない1億人の国民を抱える国内市場に安住していれば、ある程度の事業は継続できてしまう環境にあります。それが危機感のレベルが異なる原因となっているとも考えられますが、もちろんグローバルに取引のある大手企業では欧米と同様の動き方を取らざるを得ない状況になっています。

17項目の各事業へのラベル付けはある程度終わったと考えられる現在、日本企業はよりパートナーシップを強化して各項目を複合的に解決するようなイノベーションを開発していき、国際社会に貢献するような動き方を進めるべきでしょう。

これまではシングルイシューでの課題解決をしていれば、それなりのビジネス規模を得られていたわけですが、これから人口減少という日本が先進的に抱える課題を解決するためにはイシューの掛け算を行なって、なるべく省力・省資源で商品やサービスを提供できるモデルを海外に売り込んでいくような考え方が求められると言えます。

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