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4つの海外拠点を持つ北海道の小さな町

北海道東川町に視察に行きました。「写真の町」として30年以上、高校生向けの写真甲子園を開催し、北海道内では珍しく人口増加している町です。廃校を活用した文化施設や小学校を新築してスポーツ教育の施設を併設した校舎、モンベルのショップを誘致した道の駅など、様々な取組みの一端を見せてもらいました。すべて交流することに重点を置いており、それが移住者増に繋がっているという考え方です。

広々とした芝生が印象的な新しい小学校舎。地域のランドマーク

廃校を活用した文化施設には、地元産の家具が展示されている

東川町立日本語学校の国際交流事業

なかでも最も驚いたのは、この文化施設の2階にある東川町立日本語学校です。ここではアジア各国を中心に、1-3ヶ月の短期留学と半年-1年の中期留学を受け入れています。国の留学支援制度や町独自の奨学金などを組み合わせて、月数万円程度で近接する学生寮に住みながら滞在することができます。

留学生は観光の延長線上の短期プログラムから、本格的に日本での就業ビザ獲得を目指すプログラムまで、様々なカリキュラムの下に学ぶことができます。それに付随して日本舞踊や茶道、スポーツといった文化交流も盛んに行なわれています。人口8000人の町には常時200人程度の留学生がいるそうです。

この日本語学校は、台湾、タイ、中国(上海)、韓国にそれぞれ現地事務所を設けています。人口1万人以下の町としては異例の規模で、年間数千万円の予算をかけて運営されています。この現地事務所には東川町の留学経験者が相談員として常駐し、留学生をスクリーニングして送り出す機能を果たしています。

地方創生時代に躍進する町

今や日本国内への海外来訪者数が2000万人を突破しており、日本版DMOのような観光地としての整備と魅力的な地域づくりは不可分の要素となっています。とくに添乗員や通訳など、日本語ができる外国人の雇用ニーズは増大していますから、その入口の海外留学生のところを地域で押さえるのは賢いやり方だと思います。

そして外国人のようなまったく異質な存在を受け入れる地域は、知らず知らずのうちに寛容度が増していきます。ちょっとくらいおかしなことでも許容できてしまう町には、若い移住者や何かをやってやろうという挑戦者が集まってきます。『東川スタイル』に示されているような、多様なライフスタイルが生まれることで地域の魅力も洗練され再定義されていきます。

日本国内での人口の奪い合いをしている場合ではない

平成27年度の国勢調査ではついに、日本の総人口が減少に転じたことが明らかになりました。しかし未だに各自治体においては人口増加を目指して移住者誘致を繰り広げています。実は東川町のように、様々な交流事業をいくつも仕掛けることで、結果的に移住者も増えるのではないでしょうか。

北海道内では一昔前に、ニセコの水源林を中国が買い漁っていると問題になりました。昨年、トマムを開発運営していた星野リゾートは、その所有権を中国資本に売却しました。北海道にはまだまだ、海外資本を導入できるような資源がたくさん眠っています。適正かつ持続可能な開発を行ないながら、国際的な価値を高めていくような事業こそが地方創生時代には求められているのです。

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