デザインとアートの違い
デザインとアートはどこが違うのだろうか?この問いに答えられる人はどれくらいいるのでしょうか。何となく概念的に理解しつつも、説明するとなると難しい分野ですね。
職業分類としてのデザイナーとアーティスト
デザイナーとアーティストはどこが異なるのでしょうか?多くは美大出身など芸術系の素養があり、企業に所属して製品やサービスの設計に携わるか、展覧会やイベントで作品を披露することで対価を得るか、という経済基盤の違いがまずは思い浮かびます。
より概念的に捉えると、デザイナーは市場のニーズに対して問題解決を図り、具体的価値を機能として付与する仕事をしています。他方でアーティストは、美しさや心地よさといった感性価値を見出し、問題定義や可視化を進めていく仕事と言えます。
暗黙知としての価値を形式化していく
分野として、アートは学術的でありデザインは実用的であると言えます。アートは自然科学や認知構造といった面でサイエンスと近く、デザインは製品設計やサービス運用の面でエンジニアリングと近いです。野中先生の言葉を借りれば、アートは暗黙知でありデザインは形式知となるのではないでしょうか。
ビジネスとして考えた場合には、実用性としてのデザインに傾倒しがちですが、問題解決ばかりしていると機能陳腐化したり競合による収益性低下といった状況に陥ります。むしろ問題提起して自らの事業領域を拡大していくアート的な暗黙知こそが必要であり、そこに競争優位が生まれるのではないでしょうか。
アートを事業に取り入れるための方法
これまで企業のアート活動と言えば、メセナ的な社会貢献としてのパトロネージュが一般的でした。功上げ財を成した経営者が、自らの地位と名誉を喧伝するためにアートを利用するといったイメージです。
しかし、もはやイノベーションとしての創造的破壊を起こしていくためにアート的素養が必要であることは、AppleやTeslaといった企業が証明しています。日本企業に足りない要素はこの分野に対する理解であり、欧米のキャッチアップではない領域を開拓するためにはアーティストを事業に取り込む必要があるでしょう。
幸いなことに、デジタル領域の発展によってアート活動はコモディティ化が進み、低コストかつ裾野が広い形で運用することが可能となっています。エンジニアにデザインを習得させる方法は、すでにApple社内では過半数がデザインエンジニアであるという状況で一般的になりつつあります。
さらに“インスタ映え”のような、デジタルマーケティングにアート的価値を付与するといったやり方がマスマーケティングを凌駕するようになってきており、企業の予算配分にも影響を及ぼし始めています。アーティストこそが食える時代になる、そんな予感がします。