中国産割り箸には防カビ剤が使われている
本日8月4日は「箸の日」ということで、山王様=日枝神社で行なわれた箸の感謝祭に参列してまいりました。日本で消費されている割り箸は約200億膳、国民1人辺り2日に1膳の割合で消費している計算となりますね。
一方でその大半は主に中国からの輸入に頼っており、その中国でも近年は国内での木材伐採が厳しくなっているために、ロシアで違法伐採された木材が入ってきているとも言われています。いずれにしろ、日本における箸の自給率はほぼ0%であり、そのことで海外の自然環境を脅かしているわけです。
日本の文化の根幹を為す割り箸
一言で割り箸と言っても、日常的に使う元禄やお祝いの席で使うらんちゅうなど、利用シーンに応じた様々な種類の割り箸がつくられています。そして割り箸を使う際にパッと割る仕草は、命をいただくという神聖な儀式である食事において象徴的なものです。
本来、日本国内でつくられてきた割り箸は建築用材として活用された残りの背板の部分を使っていました。スギやヒノキの皮に近い白色の部分を使って、木材を余すところなく活用する日本人のもったいない精神を体現する存在でした。
中国での割り箸のつくり方
一方で中国では、基本的に丸太すべてを割り箸に加工しています。かつら剥きのように茹でてシート状にした木材を防腐剤や防カビ剤の入った水槽に漬けて、色の濃い芯に近い部分は漂白して、日本人が割り箸に対して持っているイメージに似せるように加工しているのです。
実際に東京都健康安全センターでは、これら割り箸に含まれる添加化学物質の溶出実験を行なっています。結果としては抽出溶媒にメタノールを使い、pH2.7という強い酸性状態にした場合に溶出するということで、日常的な利用にはほとんど影響がないという見解です。
ネットに出回っているような、中国産の割り箸を水に漬けたら茶色くなったといった言説はデマ情報なのですが、事実として防カビ剤や漂白剤は使われており、割り箸の破片や摩耗していく部分については体内に取り込んでいると言えます。
同様に最近増えている合成樹脂製のプラスチック箸についても、溶出試験の規格は定められています。こちらはまさしく化学物質の塊であり、当然使用していけば摩耗していくものですから、より直接的に体内に取り込んでいると言えます。
私たちの身体には恒常性が備わっている
決して不安を煽りたいわけではなく、日常利用の範疇では中国産割り箸もプラスチック箸も健康を害するレベルではありません。我々の身体には健康状態を安定に保つための恒常性が備わっており、化学物質や異物に対しても免疫や抗体といった自然治癒能力を発揮して対抗することができます。
ところが花粉症のように、ある一定の閾値を超えた瞬間にアレルギーが発生するのも人間の免疫系の機能です。生活環境に生命を脅かすレベルの化学物質などが蓄積されているという状況では、身体が拒否反応を起こします。
化学物質で接着された合板に囲まれた住宅に住み、身体や髪を洗うのに合成洗剤を使い、整髪料や化粧品を身に着け、虫よけに農薬と同じ成分の防虫スプレーをふりかけて、防カビ剤の含まれた割り箸を利用すれば当然アレルギーは発生しやすくなりますし、アトピーなどの現代病はこれら生活環境に潜む化学物質に起因しています。
そろそろ対症療法的に消費するのを止めませんか?
割り箸のように国内で生産でき、林業振興と海外の自然保護のためにはどんどん国産材を活用した方がよい産業は、実はたくさんあります。日本の伝統工芸と呼ばれる分野が大量生産大量消費の波に乗れずに危機に陥っていますが、それによって間接的に私たちの健康や生活が脅かされるのです。
身の回りの消費を安かろう悪かろうにシフトさせることは、現代社会の多くの病巣に繋がっています。現代病になったらさらに病院に行って薬を処方してもらう、対症療法によってもしかしたら身体の具合は良くなるかもしれません。
でも便利さの裏には必ずトレードオフとしてのリスクが存在します。大量生産大量消費では、そのリスクを広く薄く消費者に背負ってもらうことでほとんど見えなくしてしまっているわけです。それによってリスクが顕在化する際に犠牲となるのは、小さな子どもや免疫力の弱ったお年寄りといった生活弱者でしょう。
世の中は白か黒か、ではない
このようなリスクコミュニケーションの話をすると、「絶対安全」か「即危険」かという二項対立で物事を捉えがちです。でも本来はそんなにキッパリと割り切れるものではなく、量によって毒にも薬にもなるものがほとんどです(砂糖の致死量は1kg等)。
それよりも私たちの先祖が積み上げた伝統や知恵を捨てていくことによって見失ったもの、自分の消費が社会や環境に対してどのような影響を及ぼすのかという想像力の欠如こそが、白か黒かという分かりやすい情報に飛びついてしまう原因に思えます。
箸は2本にキッパリ分かれますが、その2本が共同作業することによって食事という生命を維持する機能を果たします。そしてそれは、異なる性質や個性を尊びつつも全体の調和を乱すことを嫌う、日本人の気風にも通じます。和して同ぜず、箸のような考え方で世の中を捉えていきたいとは思いませんか?
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