『天気の子』と温暖化型豪雨
2019年夏公開の映画『天気の子』を早速観てきました。『君の名は。』以来3年ぶりの新海誠監督作品として、期待を集めています。このコラムでは、ネタバレなしでこの『天気の子』のアイディアのもととなった気候変動について、考えていきます。
東京都心で19日連続3時間以下の日照時間
この夏は6月末から7月中旬までほとんど日照がない状況で、記録的な梅雨寒の天気が続いている昨今、晴れ間がほしいと感じるのは人間の本能でしょう。実際に太陽光を浴びなければ睡眠ホルモンであるセロトニンが正常に分泌されず、体調不良を訴える人も増えています。
農産物の生育や海水浴などの観光産業にも深刻な影響が出ており、また九州地方では記録的な豪雨に見舞われ、首都圏においてもこの長雨がもしかしたら豪雨に変わるかもしれません。とくに昨年発生した西日本豪雨では、上流域に降った積算雨量が下流域に押し寄せ、河川の合流地点で浸水するといった被害が出ました。
「温暖化型豪雨」という気象用語の登場
近年、気象庁では地球温暖化による大気中の水蒸気量の増加に伴う、ゲリラ豪雨や線状降水帯の頻発を極端現象としてモニタリングしています。気候変動の影響と異常気象のデータを組み合わせることで、その因果関係を明らかにしていくとともに、この気象条件の変化に適応していくための情報を集積しています。
温暖化や気候変動というと最近のものかと感じますが、豪雨や台風に伴う洪水は昔から存在していました。大名は治水こそが領国の石高を上げる公共事業であり、民心を安定させるものとして取り組んできた歴史があります。また時には水害を龍に例えて、人柱のような犠牲を伴ったこともあります。
『天気の子』は現実かフィクションか
映画に話を戻すと、『君の名は。』のようなBoy meets Girlな展開、そして『君の名は。』に登場した瀧や三葉といったキャラが脇役で登場、もちろん美しい街の風景を雨が彩る様子は、ファンにとって非常に楽しめるものでしょう。その前提として、これら気候変動に伴う天気の異変を頭の片隅に入れておいてもらえると、フィクションと現実が繋がる感覚が楽しめると思います。
それとともに一人の大人としては、子どもたちのやったことが世界の形を変えてしまうような、幼児的な全能感はキッチリと否定しておきたいところであり、劇中にも出てくる大人のセリフには共感してしまうのでした。『君の名は。』で思いっきり期待値が上がっていて、ファンは老若男女に広がっている作品だからこそ、子どもだった自分に戻る感覚で観てもらいたい作品ですね。猫の「雨」の成長にも注目ですよ!
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