EVが普及すれば電力不足は解消される
3月16日に東北地方を中心に発生した地震の影響で、昨日(3月22日)は東京電力・東北電力管内において初の「電力需給逼迫警報」が出されました。福島県沿岸部の火力発電所が被害を受けて休止していたこと、季節外れの低温によって暖房需要が急増したこと、曇天によりほとんど太陽光発電ができなかったことなど、複合的な要因が重なって綱渡りの状況となりました。
「電力が足りないのにEV普及できるか」という誤解
この状況下において、SNSなどでは「今後EVが普及したら、電気がもっと足りなくなる」といった論が見聞きされます。個人的に日産リーフに乗るEVユーザーとしては、どうも電力受給の仕組みを理解していないのかな、という感想を持ちます。
EVは電気で走るのは間違いなく、停電すれば走れなくなるのも正しいです。しかし、それはガソリン車も燃料がなくなれば走行できません。燃料調達についてはグローバルな流通網に依存しており、それが大きく揺らいでいるのが現在の国際情勢でしょう。一方で電力においても、その調達先は天然ガス等の化石資源が中心であり、リスクも同様です。
急速充電しなければ、EVは停電を抑制する
EVの充電方法には急速充電と普通充電があります。高速のPAなどに設置されているのは高圧の急速充電であり、CHAdeMOという規格で統一されています。こちらは系統網由来の電力を使っているため、停電時には無力化します。
しかしEVにはもう一つ、系統網に依存しない独立した太陽光発電などによる低圧充電も可能です。もちろん急速充電はできませんが、大型蓄電池の代わりにEVを活用するといった、家庭レベルのエネルギー対策ができるのです。そもそも急速充電が必要なのは長距離移動の際であり、せいぜい50km/日の日常生活においては普通充電で全く問題ないのです。
電力不足の命綱となった揚水発電
今回の電力危機においてカギとなったのは、揚水発電でした。高低差のある土地で水を使って物理エネルギーとして余剰電力を貯める仕組みであり、火力発電では足りなかった分を補いました。地上に大規模な電池を造るシステムと言えるでしょう。
揚水発電はほとんどダムのようなものですから、大型の公共工事とも言えます。当然、山を削って水の流れを制御するといった、自然環境の改変が必要となります。そのため適地が少なく、日本全国に40ヶ所余りとあまり多く開発できないジレンマを抱えています。
太陽光発電の20%は捨てられている
現在普及が進む太陽光発電についても課題があります。晴天時にはたくさん発電する一方で、夜間や曇天時には発電能力が落ちるといった特性は需要側とマッチしているわけではなく、一説によれば太陽光により発電された20%程度の電力はそのまま捨てられてしまっていると言われます。とくに大手電力会社の系統網には小規模な太陽光発電は接続されないということもあり、実は現在の大規模な電力需給システムこそが再生可能エネルギーの普及を阻害しています。
そこで、EVを普及させることで小規模な太陽光発電由来の電力を貯めるといったケースが想定できます。とくに地方の軽トラなど、従来はガソリンに依存していたクルマをEV化することで、エネルギーの地産地消も可能となるでしょう。再生可能エネルギーの普及という命題に対しても、EVは明確なメリットを提示できるのです。
農業用水を小水力発電に活用して、揚水発電化する
さらにポテンシャルを秘めているのは農業用水です。土地改良区など、農業目的で利水基盤が整備された公共事業は、小水力発電の設置によって簡易的な揚水発電として活用することが可能です。減反政策などで使われなくなった農業用水をエネルギーの観点で整備し直すのは、脱炭素政策としても合理的でしょう。
たとえば、昼間に太陽光発電によってポンプを動かして上流の貯留池に水を揚げて、夜間には集落の軽EVを小水力発電によって一斉に充電するといった地域単位でのマイクログリッドができれば、むしろ中山間地域のような条件不利地の方がエネルギー独立ができるといった立場の逆転も起こり得ます。EVの普及こそが、地域単位での系統依存を脱却するカギになると言えるでしょう。
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