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「殺処分ゼロ」の裏に隠れた大きな課題

自他ともに認める動物好きとして、行政が行なう「殺処分」はなるべく減らしていってもらいたいと考えています。犬や猫を飼ったことがある人はお分かりの通り、野生動物を品種改良して人間と一緒に暮らすために適応していった彼らは、家族として共に生きることがもっとも幸せな生き物です。

少し前に、神奈川県で保健所に収容された動物たちがすべて引き取られ、殺処分がゼロになったという報道がありました。行政とボランティアが一体となって共通の目標に取組み、達成したことは素晴らしいと思います。

平成26年度、神奈川県動物保護センターに収容された犬と猫の殺処分がゼロになりました

殺処分ゼロを達成した当事者たちの苦悩

一方で、この殺処分ゼロを実行したボランティアの当事者のインタビューでは、別の課題が浮かび上がってきます。行政のスローガンとは裏腹に、このゼロが創られた数字であることが理解できます。

栄光の影で…『神奈川県で犬・猫殺処分ゼロを達成!!』に隠された大きな課題と闇【特別インタビュー】

そんなある年に、殺処分されたのが年間約90頭だった時があったんです。そこで僕は、『今ここにいるのは約100頭。じゃぁ来年はここを200頭にすればゼロに出来るんだ!今しかない!』って思い、すぐに当時のセンター所長・Kさんに『僕が全部引き取るので、絶対殺さないで下さい!』って伝えに行ったんです。
県単位でゼロにした例がなかったので、達成すれば1つのキッカケとして、ニュースで取り上げられたり、もしかしたら何か変わるかもしれないって。所長も最初は半信半疑だったみたいだったんですが、職員さんも、他のボランティアさんも含め、だんだんと共感してくれる人が増えてくれたおかげで、ゼロを達成する事が出来たんです。なので実際は、無理矢理ゼロにしただけなんです。

田舎に行くと、まだペットは家畜のままである

私自身、岡山の田舎で暮らしていたときに、犬が知らない間に繁殖して生んだ仔犬がカラスに襲われてしまったり、吠えるのがうるさいからという理由で保健所で殺処分されてしまった犬を目の当たりにしました。その飼い主たちは別に悪気があったわけではなく、ただ犬は去勢手術をするものだという知識がなかったり、隣近所に迷惑をかけられないという体裁を優先する、ごくごく普通の高齢者たちでした。

そして高齢化が進む日本社会においては、保健所に持ち込まれる犬や猫は、高齢者が病気や転居によって飼えなくなったという理由がほとんどです。つまり、これからも保健所に持ち込まれるペットが増え続けるであろう傾向にあります。それに対して、行政やボランティアの献身や努力に依存し続けるのも限界があるでしょう。実際に『犬に名前をつける日』という映画においては、各地で活動するボランティアのギリギリの実情を描いています。

ビジネスの仕組みを通じて、ペットを救う活動

近年注目している活動の1つに、「ランコントレ・ミグノン」があります。代表の友森玲子さんは、港区で動物病院とペットサロンを経営しながら、そこで得た収益を動物の保護・譲渡に回すというこれまでありそうでなかった営利事業と公益事業の両立を図っています。譲渡とともにペット用品の販売やトリミングを行なう株式会社ミグノンプランは糸井重里さんが株主に入っており、その配当は年間○○頭の動物たちを救えたか(譲渡できたか)というものです。

一般社団法人ランコントレ・ミグノン

神奈川県横須賀市にある「特別養護老人ホーム さくらの里 山科」は、全国でも珍しい高齢者が保護された犬猫と一緒に暮らす場所です。高齢者が世話される存在ではなく、世話をすることによって元気になるといった作用があるようですね。定員100名のところその倍もの入居待ちが出るほどの人気施設となっています。

特別養護老人ホーム さくらの里 山科

これらの施設に共通する特徴としては、税金で動物たちを殺すのではなく、民間資金を集めてなるべく生かせる命を増やしていこうという取組みであり、そこで働く人たちは誇りと尊厳を持って人と動物たちの幸せな社会を実現しようとしているところです。そしてそこに出資したり参画する人々は、金銭的リターンではなく社会的リターンとしての幸せな動物たちの姿を望んでます。

これまでのように街の外れに薄汚い保護施設があって、そこでこっそりと人目につくことなく殺処分されていた、というのはもはや前時代的なものとなります。高齢化に伴う生涯活躍や地域密着型の働き方を考える上で、このペットを軸にした愛情溢れる地域コミュニティづくりには大きな可能性を感じています。


日本一生産性の上がらない保護猫が邪魔するワークスペース「SANCHACO/neco-makers」を世田谷区三軒茶屋で運営しております。ご興味のある方は是非! https://sanchaco.com