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おっさんは若者に雇われたくない

東大をはじめとした優秀な若者たちが大企業を選ばなくなった、という記事が話題です。私が勤務する地方大学においては、まだ「公務員か民間企業か」という選択肢の方が学生たちにとっては現実味がありますが、少数ながら起業してみたいという学生もいたりして、ちょこちょこと相談にやってきます。

基本的には牧田先生の記事に賛同しつつ、被雇用者としての立場ならば企業規模はそれほど影響はないと私も答えるでしょう。自主性があって、自ら起業して経営者になるような若者は別格ですが、雇われの身である立場は別にどんな選択をしようが他人に人生を決められるだけです。

日本の労働者を形成する三層構造

『日本社会のしくみ』という本では、日本の労働者として三層構造があることを紹介しています。「大企業型」と呼ばれる、年功序列・終身雇用型の組織に雇われるサラリーマン(官僚やベンチャーもそこに含まれる)、「地元型」と呼ばれる農業や地方中小企業・地方公務員として地域密着型で働く人々、「残余型」と呼ばれるそのどちらにも属さない派遣労働者・日雇い、フリーターという構造です。

そしてこの三層構造のなかで、「大企業型」の割合はさほど変化しておらず、むしろ「地元型」の雇用が崩壊して「残余型」に移っている様子が近年は見て取れるというのがこの書籍の指摘です。個人的に地方経済を見ていてもそう感じます。

失われた地元商店・中小企業

「地元型」商売のとくに小売りの現場では、個人商店がコンビニや100円ショップとなり、大資本にぶら下がる構造は都心部でも地方商店街でも同様です。地方経済において雇用創出しているのは建設業と公務員だけ、といった状況は長く続いており、残っている中小企業においても経営者の高齢化に伴う事業承継や残存資産の処分といった課題が山積しています。

大学の授業では、古い食堂をAIフル活用した地域食材を楽しめるラボ店舗にしているゑびやや、餅屋さんからクラフトビールを立ち上げた伊勢角屋麦酒といった地元商店のビジネスモデル刷新に関する好事例を紹介していますが、「地元型」商売の後継者が大胆な発想でイノベーションを興せるかと言えば、そういったケースの方が少ないのが現実でしょう。

大企業の年功序列型タテ社会の限界

一方で「大企業型」雇用においても、年功序列による階級制度はほとんどイノベーションを生んでいません。40-50代のミドル層は経営者や株主からの短期的収益を上げる要求に疲弊し、20-30代の若手に対して有効な指導や教育ができているわけではないでしょう。さらに、年功序列・終身雇用制度が有効だった製造業のような技術蓄積は行なわれず、高コスト構造が国際競争力を失っているというのはバブル崩壊以降も一向に改善されていません。

まだ昭和の頃は年功序列で若い頃に我慢していれば、最終的には役員になれるといった階層的経済的メリットもありましたが、今となってはファンタジーに過ぎません。むしろ「大企業型」雇用は消費増税の影で大幅に社会保険料を上げられ、国民年金の補填を厚生年金から行なうといった実質的な「地元型」への再分配が進められています。今後も手取り金額は減りこそすれ、増えることはないでしょう。

それよりも問題だと思うのは、年齢や社歴によってある程度階層構造が規定されている組織においては、上意下達が基本となって若手のうちから上司の考えることを忖度して対応するといった、日本企業的な働き方がスタンダードになってしまうことです。その環境でミドルになると、保守的に凝り固まって自らが抵抗勢力になっていることに気付かない、出世も転職も望めない残念な存在になってしまう可能性が高いです。

若者には起業してもらいたい、だが…

「地元型」も「大企業型」も構造的にスタックしていて、じゃあ若者たちはどうすれば良いのでしょうか?個人的には起業を勧めたいところですが、かといってIPOやバイアウトを目指すようなスタートアップはあまりオススメしていません。むしろ前述のように、「地元型」中小企業を事業承継してイノベーションを興していくのが理想的ですが、若くして継承した社長たちは中堅社員からの反発や退職が相次いで大変だったと異口同音に語ります。

人生100年時代において、雇われたり雇ったり、子育て介護といった家庭の事情も鑑みて柔軟なライフスタイルを選べる働き方こそが理想だと考えています。そのためには、ある程度の年齢になっても若者の下で働けるミドルであるべきだし、マイ・インターンのロバート・デ・ニーロみたいに、年下上司にカッコよくアドバイスできるおっさんでありたいと思う次第です。

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