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赤字路線バスを立て直す方法

たとえばアメリカ50都市の間で、翌日までに荷物を届けたい場合、航空機はいくつ必要になるでしょう?1都市当り、49都市への直行便を飛ばす必要があるわけですから、50×49=2450機もの航空機が必要であるという計算になります。普通に考えれば。

イェール大学で経済学を学んでいたフレッド・スミスという人は、ダラスというアメリカの中心にある都市に向けて各地から直行便を飛ばし、帰るときに各地宛ての荷物をピックアップすれば49機の航空機で可能、というレポートを教授に提出しました。教授に“C”という評価をつけられ、頭にきたスミス氏は彼の理論を実践すべく物流会社を起業しました。

会社の名前は「FedEx」、彼の“Hub & Spoke Model”によって瞬く間にアメリカNo.1の物流会社となりました。今でもFedEx本社には、彼の“C”の評価がつけられたレポートが飾ってあるそうです。

この例は、とくに目新しい技術があったわけでもなく、革新的な生産体制の効率化が行なわれたわけではありませんが、まさしく流通イノベーションと呼べるものです。いまや物流のみならず、航空業界や宅配便などの運輸産業全般でこの“Hub & Spoke Model”が採り入れられています。

過疎地域では路線バスが消えている

最近のニュースでは、過疎地域を中心に赤字路線バスが廃止されるといった事態が起こっており、お年寄りや子どもたちなど交通弱者の生活の足がなくなってしまうことが危惧されています。交通手段がなくなれば過疎化はさらに進みますから、路線バスを維持するために自治体や地域住民などが赤字を補てんするといった動きも見られます。

とくに東北の震災被災地では、都市部の仮設住宅などに移った高齢者が病院に通うのに不便になってしまった故郷には戻れないと、交通手段の寸断が地域の衰退にトドメを刺すといったケースも少なくありません。

ビッグデータによって赤字路線を再生させる

埼玉県で赤字路線を再生させているバス会社があります。イーグルバスでは、バスの乗降口に赤外線センサーを取り付け、バス停や時間帯ごとの乗降客数をビッグデータとして蓄積していくことで、運行状況を改善していく取組みを行なっています。結果として他のバス会社では赤字路線となっていたルートをわずか4年で黒字路線に転換するなど、ICT技術を活用した革新的な手法に注目が集まっています。

たとえばこのイーグルバスが、埼玉県ときがわ町で取り組んだ事例はまさに前出の“Hub & Spoke Model”です。従来は駅前など利便性の良いところにバスターミナルを設置するのが常でしたが、この地域では駅や主要な住宅街から同程度の距離にある場所にバスセンターを設置しました。

このバスセンターに各路線からほぼ同じタイミングでバスが到着するように運行スケジュールを組むことによって、それぞれの直行路線を運行するのに比べて1/4のコストで利便性を向上させることができるわけですね。今後、イーグルバスではさらに奥の過疎地域である東秩父村について、村営バスの運行を委託される形で赤字路線の再生を進めていくとのことです。

過疎地域有償旅客運送(白タク)の規制緩和

また過疎地域においては、NPOなど公益福祉団体による過疎地域有償旅客運送(通称:白タク)について、国土交通省の各支庁から認可を得れば自家用車での有償での送迎が可能となっています。さらに地方分権改革による規制緩和の流れの中で、有償旅客運送の許認可については自治体に権限が移ることが閣議決定されましたから、今年度中にもより多くの地域においてNPOなどが有償旅客運送に参画できるようになります。

また海外では、「Lyft」というアプリを使ったライドシェアサービスが人気を集めています。いわゆる同じ方向に行く人の車に同乗させてもらうという、ヒッチハイクをオンラインでやってしまうようなイメージでしょうか。マッチングが数分以内でできてしまうこと、Facebook認証で本人の身元確認を厳格にして、犯罪歴や実際に利用した人のレビューなどから信頼性を担保するといった機能も続々と付加されています。

そしてこのLyftの仕組みでお金をもらってしまうと、有償旅客運送いわゆる白タク行為に当るのではないかという懸念もありますが、それらを寄付として計上してしまうことで問題をクリアしているのも特徴的ですね。

過疎地域でICT技術を活用したイノベーションの可能性

このように、従来の交通システムに対して様々な革新のアイディアが出始めています。たとえば過疎地域においてまちづくりNPOが有償旅客運送の認可を自治体から受けて、平日は高齢者などの送迎サービスを展開するとともに、休日や観光シーズンにはLyftなどのアプリに登録しておいて観光客を案内するといった働き方も可能でしょう。

赤字の路線バスが廃止されるということは、一時的には不便になったり自治体や地域住民に過度の負担を強いるような場合もあります。一方でちょっと見方を変えて最先端のICT技術を導入してみるきっかけと捉えるならば、過疎地域でこそイノベーションが起きそうだと思いませんか?


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にゃん
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猫の地域経済研究所(ネコノミーラボ)

山梨県、岡山県、徳島県、福島県、北海道、三重県と日本各地でプロジェクトの0→1を立ち上げるお仕事を経験。猫がウヨウヨしている地域社会を志向するネコウヨです。猫が暮らしやすい地域は人間も暮らしやすい。気持ちが温かくて、いろんなことに寛容で、雑多な雰囲気の内容を目指しています。

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