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ポスト・ジャニーズ事務所な芸能界

ジャニー喜多川前代表の性加害問題に揺れるジャニーズ事務所、芸能界に対して陰に日向に大きな影響力を及ぼしてきた存在だけに、その存亡の危機は芸能界の勢力図が一変する可能性を秘めています。そのポジションを奪う一番手として挙げられるのがEXILEや三代目JSoulBrothersを擁するLDHであり、早速HIRO氏が代表復帰するなど機を見るに敏な動きを見せています。

また虎視眈々と日本エンタメ市場を狙っている黒船的存在として、韓国勢も見逃せないでしょう。NiziUを誕生させたJYPエンターテイメントはSeason2では男子グループのオーディションを開始しており、韓流エンタメが日本の隠れた才能を発掘する動きをいち早く始めています。

巨大な大衆エンタメに最適化されたジャニーズ

ジャニーズを中心に芸能界が回っていた時代においては、男性アイドルは童顔で小柄、歌やダンス、バラエティまでマルチにこなす器用なタイプが多かった印象です。これらはジャニー喜多川氏の好みでもあり、SMAP、TOKIO、V6、嵐、、など歴代グループはとくにTVを中心に活躍してきました。

大衆エンターテイメントが巨大化する局面では、この限られた面々が歌番組やバラエティ、情報番組やスポーツ中継のMCに至るまで出演しまくることこそが、視聴率とスポンサー受けという正義に対する最適解であり、最大公約数としての存在価値がジャニーズ事務所にありました。もちろん、ある程度のポジションを得たメンバーたちが個性を発揮し始める、グループとしての成長もありましたが、基本的にはまずはセットで売り出す方針でした。

その意味では、視聴者を含む大手メディアや広告スポンサーに至る一連のエンタメシステム自体が、ジャニーズ事務所の存在感に依存し、ジャニー喜多川氏の犯罪行為に目を瞑ってきたと言えます。

若者の夢を搾取する日本の構造

一方でこの巨大なエンタメシステムには適合しない個性を持つ若者たちは機会を得られず、また地方在住だったり貧困家庭に生まれる等の出自によって日に目を見なかった存在も多かったと考えられます。現在ではYouTubeなど配信メディアの進歩によって意欲のある個人が衆目を集める仕組みも増えてきていますが、その分競争も激しさを増してきており本質ではない部分で消耗してしまうこともあるでしょう。

芸能界に限った話ではないですが、養成のためのスクールや事務所ばかり増えてその成果を広く発信・発表する場が少ないというのは、若者の夢や意欲を食い物にするビジネスが普遍的に存在し続ける理由でもあります。まだ判断力の乏しい若者に対して、甘い言葉をかけて搾取する構造に陥れる事例は枚挙に暇がありません。この本質的な構造を変えなければ、日本のエンタメシステムが奴隷契約的に成り立っている事実を覆せないでしょう。

芸能界のオルタナティヴな動き

AAAのラッパーであるSKY‐HIが私財を投じて始めた『THE FIRST』は、この芸能界の混迷に一石を投じる動きであり、注目しています。

歌声は抜群、ダンスがキレッキレ、ラップで泣かせる、、といった個性は、既存のエンタメシステムにおいては邪魔者扱いされてきました。しかし逆に、これら個性で突き抜けなければ世界で通用しないことは、韓流エンタメに席巻されつつある現状をみればよく理解できます。

そこで、「クオリティファースト」「クリエイティブファースト」「アーティシズムファースト」という3つのFIRSTを掲げたオーディションを開催し、全国に眠る才能を発掘するとともに伴走しながらそのエッジを尖らせていく共同作業を共にしていくことで、最小公倍数的にインパクトを生み出していく仕掛けです。

芸能界は小規模分散型になっていく

これまでのTVを頂点とした最大公約数的な大衆エンタメは、地殻変動を余儀なくされています。巨大な恐竜たちが滅びを迎える一方で、変化しながら適応できる小さな動物たちが覇権を迎える時代はすぐそこまで迫っています。重要なのは出口を考えてそれに最適化されたコンテンツを磨いていく、マーケティング的な発想であり、一般企業には根付いた戦略です。

歌唱力で勝負するのであれば音楽配信プラットフォームからライブまでの導線をしっかりと構築するべきですし、ダンスを売りにするのならARを活用した動画配信から参加型で楽しめるフェスを企画する、ドラマで活躍したいなら多言語対応かつグローバルな文化も理解した上で演じられるというように、オンラインからリアルな手触りを個別に設計できる時代でもあります。

エンタメ戦国時代に生き残る地域とは

それら小規模分散型のニーズに適応できる才能は、日本全国にたくさん眠っているはずであり、この表現多様性を支える人材登用システムを担うSKY-HIのような先人たちが責任と覚悟を以って変革を仕掛けていくタイミングにあります。

そして、日本の地方において遊んでしまっている公共施設も、これら小規模分散型な需要に特化した形で集客していくことで地域活性化に結び付けるのも可能でしょう。ライブが楽しめる図書館があっても良いし、公民館でお年寄りとともにダンスを踊る若者たちが増えれば交流が生まれます。巨大なハコモノからまち全体をエンタメにできるソフト価値開発へ、舵を切っていける地域こそが生き残ることでしょう。

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