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東京都が太陽光パネルを義務化すると、東京の人口減少が加速する

東京都は小池都知事肝いりの政策として、東京都内の新築物件に対して太陽光発電の設置を義務化する条例を来年度以降にも制度化する見込みです。この設置義務は建築主ではなく施工業者に課されるもので、年間の着工数のうち85%に設置しなければならない厳しいものです。

太陽光パネルの技術革新は進むのか

この設置義務化によって太陽光パネルの需要が増えれば、製造コストが安くなり発電効率が上がるといった、プロダクト・イノベーションが進むものと期待できます。一方で折からの半導体不足によって供給が滞りコストは高止まりする状況でもあり、果たして絵に描いた餅になってしまうのではないかという懸念もあります。

太陽光パネルの設置に伴って、当然建築コストは上がりますし、建物の耐荷重や耐震設計面での変更も余儀なくされるでしょう。一方で屋根材一体型太陽光パネル発電ガラスのような、日本発の新機軸プロダクトも出てきているため、こういった軽量かつ建物全体のデザインを損なわない太陽光パネルが増えれば良いですね。あるいは、この条例に太陽熱温水器等の熱利用まで含まれれば尚良いでしょう。

建築コストがどのくらい上がるのか

これら太陽光パネルが義務化されれば、東京都での建築コストが上がることは確実です。すでに折からの資材高騰によって、従来から1.2-1.3倍程度になっている現状ですが、ここに太陽光パネル分が増えれば1.5倍程度まで建築コストが膨らむことも予想できます。

もちろん、太陽光パネル自体を別の事業者が設置する「屋根貸しモデル」のように建築コストから外部化する方法もありますし、固定買取制度に基づき太陽光パネルに対する融資を別建てにする方法もあります。いずれにしても建築主にとっての届け出や融資交渉といった事務手続きコストは増大するわけですから、今後東京都内で新築物件を建てるハードルは上がることでしょう。

建築主のコストが増大する=賃貸物件の家賃が上がることを意味します。すでに都内に住宅を保有する層は比較的高齢で、あまりこのニュースは関係ないでしょう。一方でこれから新築を建てようとする現役層は、東京都の建築コストが上昇すれば、埼玉県や神奈川県、千葉県といった郊外に転出するといった選択を採ることも十分に考えられます。結果として東京都から生産年齢人口が転出し、高齢化が進展するといった状況に結び付く可能性もあります。

脱炭素の本命は断熱改修

太陽光パネル義務化のニュースがセンセーショナル過ぎるせいか、それとともに導入が検討されている脱炭素に向けた様々な施策への注目度が薄い印象もします。実は、太陽光パネルよりも二酸化炭素排出量削減に寄与しそうなのは窓やドアの断熱改修であり、そこに対しての補助金を大幅に拡充することが計画されています。

これは従来の補助率1/6(上限58万円)という条件を補助率1/3(上限116万円)に倍増させるもので、もちろん既存住宅にも適用可能です。東京都では新築住宅着工数は年間10万戸程度である一方、既存住宅数は約700万戸とこちらの政策の方が適用件数が圧倒的に多いのです。

ここまで補助金が多くなれば、金融機関から断熱リフォームのための融資を受けつつ、光熱費の減少分で十分にペイできるでしょう。これら政策の総合的な帰趨を鑑みるに、新築件数は減っていく一方でリフォーム・リノベーションが増加していく方向性になっていくことでしょう。

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