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日本三大桜・三春滝桜

乗り物に乗っている時が最も読書が捗る性癖のため、青春18きっぷで桜前線を追いかけながら北上しました。桜の方はそんな人間の事情には付き合ってくれず、全国一斉に咲き始めた模様です。

10年ほど前に、福島県被災地の復興支援の仕事をしていました。その際にいつも通るのが三春町で、滝桜という樹齢千年とも言われる日本三大桜の古樹があることを知りました。なかなか花が咲くタイミングには来れず、またコロナ禍もあって訪問する機会がありませんでした。そんな経緯もあって、改めて桜の季節に三春に行くことができました。

みちのくの入口、三春

三春町は郡山市の東側に位置し、古くから白河関を越えた先の要衝でした。江戸時代には5万石の小藩三春藩が置かれ、幕末を迎えます。南から土佐藩を中心とした板垣退助率いる官軍が押し寄せる中で、陸奥・奥羽・会津・越後の各藩は奥羽越列藩同盟を結成し対抗しようとします。

白河関を突破して棚倉藩を1日で陥落させた官軍は、三春藩の目前に迫ります。家老河野広中は密かに官軍に恭順し、三春城を無血開城することで町民は戦火に巻き込まれることなく、この滝桜も無事に明治の世を迎えました。その後、二本松〜会津へと激戦が続き、三春藩は裏切り者として三春狐なる呼ばれ方をされるようになります。

奥州越列藩同盟については、最大勢力の仙台藩が日和見主義だったことなど、決して各藩の足並みが揃っていたわけではなく、歴史的な評価は難しいのですが、いずれにしてもこのような人間模様をずっと見続けてきた滝桜は毎年花を咲かせています。

午前中は蕾が膨らんだ状態
ポツポツと咲き始める、生命力が感じられる瞬間

老いてなお樹勢旺盛なマザーツリー

滝桜に訪れたタイミングはちょうど咲き始めで、気温がぐんぐん上がってどんどん開花していく様子が観察できました。満開も良いですが、この古樹の生命力をダイレクトに感じられたのは個人的にも感動しました。

そして滝桜はまさにマザーツリーとして、毎年たくさんの花を咲かせて実をつけ、その種子から数多くの苗木を地元の方々が育てて増やしています。また、滝桜周辺は生物多様性の面からも貴重な生態系が残されており、500円/人の観桜料を徴収して環境整備を図るといった取組みが進められています。

梅・桃・桜が同時に咲くことから三春と呼ばれるこの地では、滝桜というシンボルツリーを中心に過去から未来に繋ぐ地域住民たちの暮らしが続けられています。

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