ポケモンGOに学ぶ、社会現象の起こし方
ポケモンGOが大流行しています。それにしたがって賛否両論が巻き起こっています。歩きスマホや不法侵入の危険性を指摘したり、都市部の一部ポケストップにポケモンマスターが集中するといった弊害も出てきています。それでもここまで社会現象と化している状況は、意図的に新しいムーブメントが生まれる可能性があります。
たとえば選挙期間の投票所にレアポケモンが出るということであれば、選挙の際の投票率が一気に上がるかもしれません。ポケストップになっているマクドナルドでタイアップ商品を出せば、ここ数年の不振を一気に打開できるかもしれません。ポケモンGOが一般大衆を動かせるプラットフォームになり得ているからこそ、一般的なスマホゲームの収益モデルである課金ビジネスには依存せず、ポケストップやジムの設置やタイアップといった法人向けの広告ビジネスも可能となっています。
一気にキャズムを超えたポケモンGO
マーケティングの考え方で、キャズム理論と呼ばれるものがあります。サービスや商品が普及する流れで、新しい物好きのアーリーアダプター層と大多数が含まれるマジョリティ層の間には大きな壁が存在しています。今回のポケモンGOは、ポケモンというコンテンツ性が持つ魅力と、アメリカで先行的に公開されたニュース性の伝播力、そして実際にプレーする中でハマるゲーム性が上手く組み合わさり、一気にこのキャズムの壁を超えたと言えます。
実際に私が関わる地方創生分野においても、このキャズムを超えることに非常に苦慮しているわけですが、どうしたら一般大衆を動かすことができるかが成功するかどうかの鍵です。ポケモンGOの是非は別にして、要素分解をして良いところは学んでいきたいと考えています。
ポケモンGOにハマるゲーム性の正体
ポケモンGOのゲーム性は、フランスの思想家・ロジェ=カイヨワが示した「遊びの4要素」を忠実に守っています。人間社会における遊びの重要性は、ホイジンガ等によって指摘されています。子どもは遊びを通じて社会のルールを学び、他者との関係性や自己認識を成熟させていくという考え方です。
この『遊びと人間』においては、以下の4つの要素が遊びにおいて重要であると述べられています。前作のIngressにおいてもこの4要素が分析されていますが、ポケモンGOにも発展的に実装されています。
競争(アゴン)
ポケストップを巡ってレベルを上げたり、ポケモンを集めてジムで戦うといった要素は「競争」です。ポケモンマスター同士は色に別れて戦いますが、一方で同じジムを守るチームを作ったり、今後実装予定のポケモンを交換するといった機能を通じて、ローカル単位での社会性を育んでいきます。
運・偶然(アレア)
野生のポケモンに出会う確率は完全に運が支配しています。そしてそのパラメータも様々で、強いポケモンをGETするためには粘り強くプレーし続けるしかありません。たくさん課金することで強いポケモンが出るという要素もなく、レアポケモンが出るという場所に出かけていく挑戦が重要です。
模擬(ミミクリ)
ポケモンGOでは仮想的に男女のキャラクターにニックネームを付けてプレーします。男性が女の子のキャラを選んでもよく、その服装や髪の色などをアレンジできます。このアバター機能は拡張性があり、今後はレアアイテムを販売したりレベルによって成長したりするかもしれません。現実世界とは違うアイデンティティを確立することで、非日常な体験ができる仕組みです。
めまい(イリンクス)
実際の地図の上に仮想的なポケモンGOの世界が重ねられ、その上を走っていくことは非日常な冒険です。そして、ポケストップにルアーを差したり、ジムを守ったりと現実世界の地図上に自らのフィールドを構築しています。ルアーを差すことで周囲のポケモンマスターに感謝されたり、ジムで見ず知らずのポケモンと戦ったり、現実世界を超越した関係性が生まれるのです。
社会を変えたければ、遊びを取り入れろ
このように、ゲーム性を通じて新しい体験を取り入れるという考え方は、行動経済学や行動遺伝学といった学術融合領域で盛んに研究されています。今後のビジネスや政治、社会運動においても、様々な分断を結び付ける役割として期待できるでしょう。高齢者と子どもが一緒にプレーする、男性と女性とLGBTが出逢う、都市と田舎を行き来するといった動きに繋がる可能性を秘めています。
社会を変えたいと願う当事者であれば、まずはポケモンGOを体験してみることをオススメします。教条的に正論をぶつけ合うだけでは何も変わりません。むしろポケモンGOのような社会現象をしっかり体験し、その上で問題点や自分の活動へ応用できるポイントを探っていくことが、遊びを通じて自分自身を成長させる大きな学びとなることでしょう。
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