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イノベーションは辺境・素人から生まれる

野中郁次郎、米倉誠一郎、延岡健太郎、青島矢一という一橋大学の誇るスター教授たちのお話を伺いました。論文書く書く詐欺状態で不義理を働いている身ですが、先生方の共演は非常に刺激的で、改めて自分自身も論理体系を整理しなければならない気持ちになりました。

野中郁次郎、82歳の凄み

中でも驚異的だったのが、野中郁次郎先生です。82歳にして思考明瞭であり、下町育ちの江戸弁で「棺桶に片足突っ込んでいる」と笑いながら、アメリカ海兵隊を研究した最新のコンセプト『知的機動力』を発表されるなど、老いて益々盛んといった表現がピッタリの雰囲気でした。

知的機動力は、野中先生が以前から提唱されているSECIモデルに基づいており、PDCAなどの分析検証的プロセスからはイノベーションは生まれないと看破されています。つまり、属人的な暗黙知が知識として形式化されるためには、共同化⇒表出化⇒結合化⇒内面化というナレッジマネジメントが重要となることを、アメリカ海兵隊の事例をもとに説明されています。

ゲリラ部隊のイノベーション要請

アメリカ海兵隊のように、従来の軍隊組織からは逸脱したゲリラ的任務を請け負う部隊においては、状況や相手に応じた柔軟な戦略が求められます。そして個々の隊員の高い能力(暗黙知)をいかにチーム内に共有化していくかについて、極限状態に置かれる厳しい訓練を共に経験することが重要だと説きます。

翻って営利組織としてのベンチャー企業は、ゲリラ的に戦略や組織を柔軟に組み替えていく必要性に迫られます。早期に失敗して素早く修正して対応するといった、コアメンバーの高い資質をいかにチームに波及させていくかのプロセスこそがイノベーションの源泉となるのです。

同様に、業界の常識や十分な知識を持たない人々がイノベーションを起こすケースもあります。ニーズが刻々と変化する市場においては、分析的にアプローチするのではなく多様性を担保した生態系をいかに醸成していくかが重要であり、技術革新や情報伝達コストの低下は多くの素人が機会を得る土壌となっています。

大企業・組織からイノベーションは生まれないのか

米倉先生などは、もはや日本の大企業にはイノベーションを起こすことは構造的に難しく、シリコンバレーやベンチャー企業に任せるべきという極論を説きます。一方で延岡先生や青島先生など現役のイノベーション研究者たちは、大企業こそ優秀な人材が集まっており、階層構造によって合意形成を進めやすい組織になっていると言います。

個人的には、大企業や役所のような組織がイノベーションを生み出すことは非常に難しいと思いつつ、不可能ではないと考えます。とくにライフサイエンスや人工知能、自動運転といった長期に渡る実証実験によるデータ蓄積が重要となる技術領域においては、人的リソースと資本に余力のある大組織がコミットしなければ難しいでしょう。

問題は行き過ぎた株主資本主義によって利益重視となり、こういったイノベーションを生み出す源泉となるR&Dに予算が割けない現状にあります。サラリーマン経営者が増えれば、2-3年の自分の任期中に大過なく予定調和な経営を行なえばよいという事なかれ主義に陥り、結果として社内政治に終始したり自社株買いやM&Aを通じて売上げ規模や株価を維持するといった、イノベーションを生み出さない構造が再生産されていきます。

1人の熱狂的信念からはじまるイノベーション

成熟社会においては、さほど変化は望まれず世の中は保守的になります。そこでいかにイノベーションを起こしていくかの鍵となるのは、1人1人が持つ理想的価値観としての”真・善・美”なのではないでしょうか。そして、正しい価値観を育むのは教養であり、文化や歴史から認識を正しく持つという当たり前の感覚こそが貴重な資源となります。

そのような価値観に基づいた個人の感覚から、信念が生まれます。こうあるべき、かくありたいという強烈な想いを持つ1人の人間が、周囲の人々にその暗黙知を広げていき、SECIモデルに基づいたプロセスを通じてイノベーションが起こっていくのでしょう。「傍観者となるな、当事者たれ」と、背中を押された想いでした。刺激を受けたからには信念を形にしていきたいと思います。

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猫の地域経済研究所(ネコノミーラボ)

山梨県、岡山県、徳島県、福島県、北海道、三重県と日本各地でプロジェクトの0→1を立ち上げるお仕事を経験。猫がウヨウヨしている地域社会を志向するネコウヨです。猫が暮らしやすい地域は人間も暮らしやすい。気持ちが温かくて、いろんなことに寛容で、雑多な雰囲気の内容を目指しています。

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