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アニマル・ウェルフェアと安楽死

滝川クリステルさんが代表を務める一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル主催の「フォスターアカデミースペシャル2019」に参加しました。テーマは犬と猫のアニマル・ウェルフェアということで、「殺処分ゼロ」というスローガンに伴う課題について議論されました。

アニマル・ウェルフェアとは何か

アニマル・ウェルフェア(animal welfare)という言葉は聞きなれないかもしれません。日本語に直訳すると動物福祉、感受性を持つ動物や家畜に対して、ストレスが少なく行動欲求が満たされた状態で飼育されることが求められる考え方です。

1.空腹と渇きからの自由
2.不快からの自由
3.痛みや傷、病気からの自由
4.正常な行動を発現する自由
5.恐怖や苦悩からの自由

今回のイベントにおいては、「アニマル・ウェルフェアに則った殺処分ゼロ」という目標が掲げられ、2020年までに譲渡対象となる約20,000頭の犬猫を救うことが進められています。

環境省の分類においても、治癒の見込みのない病気を患っていたり、攻撃性がある等の飼養に適さない個体を「分類①」とし、また引取り後に死亡した個体を「分類③」とすることで、譲渡対象となり得る個体を「分類②」として積極的に譲渡し、「アニマル・ウェルフェアに則った殺処分ゼロ」へと近づけていくとのことです。

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これら飼養に適する等の判断は自治体に委ねられており、「殺処分ゼロ」のスローガンの下に自治体が恣意的に定義を変えるリスクも指摘されています。今回はこの統計上の課題は深掘りしません。


ペット安楽死の是非について

今回のイベントの大きなテーマとなったのは「安楽死」についてです。犬猫の殺処分数のうち、最大の割合を占めるのが幼齢の猫であり、これらは地域猫活動によるTNRを地道に実施していくことで予防できるとされています。

次に殺処分数が多いと言われているのは、高齢者が飼養していた犬猫が入院等の理由によって飼育できなくなり、ペットも高齢のために殺処分されてしまうケースがあります。この場合、高齢でも適切に譲渡される体制を地域で形成することが最善ですが、病気や他人に慣れないといった際に安楽死という選択肢は採り得るべきかについて、議論が分かれています。

ドイツのティアハイム・ベルリンを運営されているアネット・ロスト氏が来日し、基調講演としてアニマル・ウェルフェアに則った安楽死の現状を説明してくれました。ドイツにおいては原則として殺処分は禁止されているものの、倫理委員会による12項目の判断の下、本当に苦しんでいて生きる喜びが見つけられないと判断された場合は安楽死の処分が採られるということです。

「殺処分ゼロ」スローガンによる弊害

近年、動物愛護法が改正されたことに伴って行政や様々な団体が殺処分ゼロをうたい文句として譲渡活動を行なっています。それ自体は非常に喜ばしいことですが、それによって大きな団体では狭い犬舎で攻撃性のある犬を引き取って殺傷事件を起こすといった問題も発生しています。

同様に、行政が殺処分ゼロを楯に引取りを拒否したり、引取り屋と呼ばれる業者によって闇に葬り去られるといったケースも出てきています。とくに動物愛護に関するニュースは感情論で支配されがちなので、臭いものには蓋をして美談で終わらせてしまう傾向にあります。

どこかの個人や団体が身の丈を超えるほどに努力して、たくさん引き取って多頭数飼育崩壊を起こしてしまうような状況はやはり不健全です。それよりも社会システムとして、犬猫と暮らすライフスタイルを送ることが幸せであるというコンセンサスと、なるべく近い地域コミュニティで相互に支えあい何かあったときにはスムーズに譲渡できる体制づくりが理想でしょう。

今後は個人としての具体的な取組みについて、公開していく予定です。


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