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ペットを売らないビジネスの可能性

先日、NHKクローズアップ現代+で「追跡!ペットビジネスの闇」という特集が放送されました。かなり反響が大きかったようで、ペットの保護や譲渡に対して注目が高まりそうです。

動物愛護法については2012年に改正され、2013年より施行されています。主な内容としては、①犬猫販売業に対する規制強化 ②ブリーダーに対する規制強化 ③多頭飼育に対する勧告・命令 ④保健所での引取り拒否 ⑤災害時の同行避難 といった項目が追加されました。詳しい改正内容については環境省の公告をご参照ください。

「殺処分ゼロ」スローガンの裏に隠された犠牲

殺処分ゼロというスローガンの問題点については、以前の投稿においても指摘しました。行政目標としての殺処分ゼロは、保健所での引取りを拒否することで達成可能なのですが、そこで路頭に迷った動物たちがどこに消えていくのかについては、実はまったく解決していません

このNHKの特集においても、“引取り屋”と呼ばれる事業者が2-3万円程度の手数料で引き取った動物たちを、狭いゲージのなかでロクに餌も与えずに衰弱させていく様子が映し出されていました。また、大量の動物たちの死体を山中や河原などに遺棄するといった事件も起こっています。

必要なのは、義憤ではなく教育

このようなニュースが流れると、感情的に「ペット業者は規制すべきだ!」「引取り屋なんて悪質な事業者は逮捕しろ!」といった声を挙げる場合があります。こういった動物愛護にまつわる活動においては、直情的な感情に支配されて、結果的に行政やペット業者の対応を硬直化させてきた経緯もあります。法律が変わってもそれが闇に流れるだけで問題解決に至らないのは、流通体制そのものに原因があるのではないでしょうか。

ペットショップでは子犬や子猫を展示して、衝動買いさせることで消費を煽っています。犬猫は8週齢まで親と一緒に育てた方が問題行動を起こさないことは、科学的データに裏付けられた常識として、海外では子犬や子猫を展示販売すること自体が禁止されています。ペットを飼いたい人は譲渡施設やブリーダーの元に何度も足を運び、また自宅で新たな家族を受け入れるための準備を進めます。

つまり、ペットは販売して終わりの消費物ではなくて、生涯付き合っていく家族として適正な飼養環境と信頼関係が必要となります。そして実は子犬や子猫をイチから育てるよりも、ある程度訓練されて落ち着いた譲渡動物を受け入れる方が、飼い主としても負担が少なくて済みます。ペットを飼いたい人たちが新しい常識を知らなければ、ペットショップの“在庫”とそれを処分する流通という既存の事業者はそのままの状態でしょう。

ペットを売らない方がビジネスになる時代

ペットショップにとっても、20-30万円で血統書付きの子犬や子猫を販売するのは、実は病気になったり躾に苦労したり、購入者からのクレームが増えていてリスクの高いビジネスとなっています。最近ではこんなに大きくなるなんて想定外という、犬猫の成長を考えない常識外れなクレームもあるようです。

むしろ2-3万円で訓練された譲渡動物を引き取って、5年10年と訓練師やトリマーの元でお世話になるという継続的な関係性を持ち続けるビジネスモデルの方こそ、リスクが低くかつ不幸な動物たちを生み出さない事業になるのではないでしょうか。実はウチの犬も、ペットの訓練やトリミングをやってもらえるサロンにお世話になっており、近所の友達の犬と定期的にアウトドア遠足に連れていってもらったり、いろいろな関係性が増えています。

私自身も三重県で動物譲渡を進めるNPO法人地球のいきものを設立し、継続的な事業性と不幸な動物たちを生み出さない社会性を両立させた地域社会づくりを進めていくつもりです。この夏にはドイツのティアハイムに視察に行き、動物たち中心のまちづくりを勉強してしてくる予定です。

日本一生産性の上がらない保護猫が邪魔するワークスペース「SANCHACO/neco-makers」を世田谷区三軒茶屋で運営しております。ご興味のある方は是非! https://sanchaco.com