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政府に不満があるならボイコットしよう

集団的自衛権の解釈容認など、衆参両議院において安定多数を確保する与党の政策決定が数多くの波紋を広げています。正確に言えば、2012年の衆院選挙の結果によって集団的自衛権の容認などの安保政策が進んでいくことは規定路線だったわけですが、憲法によって明確に否定されている集団的自衛権を閣議決定で解釈するという手法は、さすがにやり過ぎという印象です。

このような政府のやり方に対して、一般市民が抗議する手法にはどのようなものがあるのでしょうか。現在進行形で行なわれているものとして、国会議事堂や首相官邸前でのデモ活動が挙げられます。誰でも参加できる気軽さがある一方で、政治的主張が薄まったり実効性に疑問符がつく手法でもあります。

2011年NYウォール街で起こったデモ活動

記憶に新しいところでは、2011年にニューヨークの金融街ウォールストリートで数千人規模のデモ活動が行なわれました。1%の富裕層が金融資産を独占している状況に「99%の人々」が立ち上がり、10-20代の若者を中心に金融資本主義に対する抗議活動が実施されたものです。

この「ウォール街を占拠せよ」という活動はそれなりの広がりを見せましたが、目的が曖昧になっていったことや、活動資金の枯渇、近隣からの苦情といった問題から、1カ月程度で鎮静化していったということです。また現実にこれらの活動をオーガナイズしていた若者たちは高学歴なエリートだったと言われており、99%の不満というよりは世界的に見れば裕福な上位2%の世代間闘争だったと、シニカルに表現されることもあります。

コミュニティが動いた歴史を振り返る

実際にデモ活動によって歴史が動いた例として挙げられるのは、「モンゴメリー・バス・ボイコット事件」です。人種差別が当たり前だった時代に、バスの中で白人用座席に座っていた1人の黒人女性が席の移動を拒否したところから、市内すべてのバスの利用を黒人労働者がボイコットするまでに発展します。これらの活動を指導したのがキング牧師であり、最終的には公民権法の確立という、法の下での平等を獲得することに至りました。

コミュニティ・オーガナイジング・ジャパンという団体が、日本でもこれら市民一人ひとりの力によって歴史が動いた経過について研究しています。社会変革のためのコミュニティ・オーガナイシング・ワークショップのガイドブックも公開されていますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。

年越し派遣村に見る、デモ活動の作法

日本で行なわれたデモ活動で有名なのが、2008‐09年の年末年始に実施された年越し派遣村でしょう。リーマンショックの影響によって雇止めが行なわれ、いわゆる「派遣切り」によって働き口を失った非正規雇用者たちが国会や官庁の目と鼻の先にある日比谷公園で炊き出しなどを行なう光景は、ニュースの少ない年末年始にTVなどで連日報道され、翌年以降は東京都による公設派遣村が設置されるようになりました。

年越し派遣村も、実際に雇止めされた失業者はほとんど参加していなかったり、支給されたお金をパチンコや酒に使ってしまったりといった問題がありましたが、雇用関連法の厳格化や非正規雇用者の雇用保険整備といった労働者の待遇改善には繋がりました。実効性よりもパフォーマンスとして、国家権力が関心を持つように働きかけていく手法は参考になるでしょう。

反原発・安保デモはファッション?

一方で最近行なわれている首相官邸や国会議事堂前でのデモ活動は、明確に不利益を被っている層が存在せず、イデオロギーの違いを主張するような手法となっているために、なかなか活動が拡がっていないという印象があります。どちらかといえば左翼的な考えを持つインテリ層の都市住民が、ファッションや文化の発露として政府のやろうとしていることに抗議している感じがして、ウォール街と同様に一部の恵まれた人たち同士の権力闘争に見えなくもありません。

もちろん、原発の問題や憲法改正といった話は現代社会のみならず、将来世代にとっても重要なイシューとなるために、彼らの権利を代弁しなければならないと立ち上がっている人たちが多いことも理解しています。一方でそのアプローチの仕方が大多数の一般市民にとっては鼻白む、無関心な方向性にいってしまっているために、一部の層の自己満足として政府側にも処理されてしまっている感じがします。

「クラウド・デモクラシー」の時代

いまや様々な手段によってデモ活動を継続させていくことが可能となっています。ソーシャルメディアの発展によって、活動は瞬く間に拡散していきます。Webなどをつくり、それらの情報を集積していきながら仲間を集めることもできるでしょう。最近では便利なまとめサイトがあるので、時系列で活動の経緯を明らかにできます。

Change.orgのような署名サイトでは、このようなソーシャルメディア上での賛同意見を集めながら、政府やメディアにメッセージを届けることができます。活動資金をオンラインで集めたいのであれば、Spikeのような決済手数料無料のオンライン支払ツールがあります。泊まり込みで活動している仲間には、コンビニから宅配してもらえたりもします。地理的な制約を超えて、活動を急速に拡げていけるプラットフォームは整っているわけですから、あとはオーガナイズする側のセンスが問われているとも言えます。

日々の消費のデモ活動・ボイコットが重要

そして忘れてはいけないのは、私たちの毎日の消費活動も政治的な意味合いを持っているということです。ブラック企業と呼ばれる労働者軽視の企業の商品やサービスを買わないようにする、自然環境配慮やリサイクルが不完全な製品はボイコットするといった、日々の判断こそが重要です。

結果的に社会を良くしていこうという意識の強い企業が競争力を持つことで、政府に対しての働きかけの強さや法制化といった動きに繋がります。新しいテクノロジーや生産手段の革新といったイノベーションも起こりやすくなるでしょう。私たちの日々の選択こそが、より良い社会をつくっていくための決め手となるのです。


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