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withコロナとafterコロナは違う

安倍首相の辞任会見の冒頭で、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部での決定に関する説明がありました。ニュースでは大きく採り上げられていませんでしたが、かなり重要な示唆が含まれていたので書き記しておきます。

withコロナを選んだ日本

「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」では5つの政策目標を掲げています。とくに重篤化が懸念される高齢者や基礎疾患を有する人に医療資源を割く一方で、無症状者や軽症者については宿泊療養や自宅待機での対応となる見込みです。

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現時点では、PCR検査等で陽性になった人は感染症法上の指定患者として入院勧告を受けるといったフローになっているため、医療体制のひっ迫が懸念されていました。秋冬にインフルエンザが流行した場合、これらが複合的に医療機関の負担となる可能性があるため、現実的に治療がさほど必要ない人は入院させない処置を執ることになります。

これはつまり、ある程度の市中感染とPCR検査陽性者数の増加は許容しつつ、重篤化リスクの高い人々を守りながら社会経済活動を回していくという、「withコロナ」的な考え方と言えるでしょう。政府としては感染症を抑制するための緊急事態宣言をもう使いたくないという意思表示となります。一方でこの状況はワクチンが市中に行き渡る2-3年程度は継続することを意味します。

afterコロナを目指すことは諦めた

少し前に、台湾や韓国のような完全封じ込めを実施して、経済活動を元通りにする「afterコロナ」を目指す方向性について書きました。東京五輪の開催に向けた“建前”を守るために、年末年始に緊急事態宣言を発令する可能性があるとしたものです。日本の場合、この1年後というゴール設定が自らの首を絞める状況になると思います。

8月上旬の時点では、西村経済再生担当相は罰則付き休業要請を導入する可能性について言及していましたが、憲法下での私権制限に当たるものとして慎重な姿勢も示しています。一方で小池都知事をはじめとした地方首長は、罰則付き休業要請をするべきという論調を強めています。その考え方に基づいて、他の府県との往来を控える要請を行なったのは記憶に新しいところです。

政府としては、afterコロナを目指す強権的な制限はやりたくない“本音”と、東京五輪開催をするために来年春までにはafterコロナ=完全封じ込めを実現しなければならない“建前”を使い分けてきたわけですが、予想以上に経済状況が悪化しているという数字が明らかになる中で、もはや建前に構っていられなくなったというところでしょう。

誰が首相になっても無理ゲー

映画『シン・ゴジラ』の台詞に、「次のリーダーがすぐに決まるのがこの国の長所だ」というものがありました。逆説的には、誰が首相になっても政策的にはあまり変わらずに、調整・すり合わせ型の意思決定が為されてきた経緯があります。それは日本的とも言える、責任の所在を不明確にしつつ時間をかけて合意形成を図るやり方であり、平常時には機能してきたものです。

しかし急激な変化やそれに対する矢継ぎ早の対応を進めるような、非常時においてはほとんど機能せずに後手後手に回ってしまうというのも、個人向け給付金やアベノマスクといった“成果”において明らかです。恐らくは派閥の力学の中から選出されるであろう次期首相も、調整には長けていても非常時の対応は不得手なのではないかと考えられます。

それでなくとも1年以内には総選挙があり、東京五輪の開催可否、そして秋冬に向けた感染症対策といったすでに確定している変化に加えて、もしかしたら秋の台風被害やグローバルでの経済危機といったオプションも考えなければならないわけで、こんな時に首相をやるのははっきり言って貧乏くじのようなものだと思ってしまいます。東京五輪、まだやる気なんですか?

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